ロジャーズ氏、戦争がどう始まるかを語る

ジョージ・ソロス氏とクォンタム・ファンドを設立したことで有名なジム・ロジャーズ氏が、Thoughtful Moneyのインタビューで戦争について語っている。

戦争はどう始まるか

現在、ウクライナとパレスチナで戦争が起こっている。それは今のところ、金融市場にはそれほど影響を及ぼしていない。

だから多くの投資家はもうあまり注意を払っていないのではないか。だが戦争では本当に何が起こるか分からない。何処で何が始まるか分かったものではないのである。

ロジャーズ氏はその例として、サラエヴォでオーストリア=ハンガリー帝国の皇太子がセルビア人に暗殺されたことから始まった第1次世界大戦を挙げている。

そのセルビア人は当然ながらセルビア人全員を代表しているわけでも何でもないのだが、その後セルビア政府はオーストリアに詰められることになる。そしてオーストリアはセルビアにいくつかの要求を突きつけた。

ロジャーズ氏は次のように語っている。

オーストリア皇帝の息子がセルビアで暗殺されたので、オーストリア皇帝はセルビアに9つの要求を突きつけた。セルビアはそのうち8つに同意した。

より厳密には、セルビアは9つの要求のうち、セルビアの裁判にオーストリアを関与させろという内容を含んでいた2つの要求を拒んだ。

ロジャーズ氏はこう続ける。

セルビアは9つの要求のうち8つの同意した。だが当時86歳だった年老いた皇帝は「残念、戦争だ」と言った。そして世界中が戦争になった。

ロジャーズ氏は語っていないが、当時の皇帝だったフランツ・ヨーゼフ1世は息子を殺されてセルビアを許せなかったわけではない。むしろ自分の反対を受け入れずに身分の低い女性との結婚を強行した息子の死を神に感謝したと言われている。

だが出来る限り要求に答えようとしたセルビア政府の姿勢をフランツ・ヨーゼフ1世は突っぱねた。その彼の独断で世界中が戦争になったわけである。

戦争はいつでも拡大しうる

ロジャーズ氏のこの話を聞いて思い出されるのが、ロシア・ウクライナ戦争の開戦直後にキエフの市民が「これは政治的な戦争で、ウクライナ人とロシア人は戦いたがっているわけではない」と言っていたことである。

ウクライナ情勢はNATOとロシアという2つの勢力がロシア国境でぶつかったことが原因である。どちらからぶつかりに行ったからロシア国境で戦争になっているのかを理解する日本人はほとんどいない。何故それが例えばドイツ国境ではなかったかである。

だがいずれにしても言えることが1つある。第1次世界大戦にせよウクライナにせよ、政治家がいなかったら戦争は起こらなかったということである。

ほとんどの国民は他の国まで行って人を殺してくることに興味など持たない。それをやりたい人間が居て、その人間にその権限が渡されているからそうなるのである。

だが面白いことに、馬鹿たちは戦争になったら政治家が守ってくれるだろうと考える。多くの日本人がつみたてNISAを金融庁に感謝しているように、あるいは日本人が自民党を何度も当選させるように、人は自分を害する相手を拝んで感謝する生き物である。

ロジャーズ氏はパレスチナ情勢についてこう続ける。

紅海で起こっていることは知っている。あなたもそこで何が起こっているか知っている。だがそれがどう発展するか、誰が知っているだろうか。

戦争の本当の問題は、どうやって止めるかだ。始まったことはもう十分悪いが、問題はどうやって止めるかだ。

ベトナム戦争はどうだ? ベトナム戦争はアメリカ政府による詐欺によって始まった。そして誰も止められなかったので10年続いた。

「イラクが大量破壊兵器を持っている」という虚偽の主張によって戦争になったイラク戦争のことは言うまでもない。そして大半のアメリカ国民はそれとは何の関係もなかった。戦争はそのようにして起きる。そしていつ終わるかは誰にも分からない。

恐らく、重要なのは個別の紛争よりもトレンドだろう。ウクライナとパレスチナで戦争になっている。レイ・ダリオ氏の言葉で言えば、アメリカの覇権が西側の外には届かなくなっているからである。

恐らくだが、このトレンドはウクライナとパレスチナだけでは終わらないだろうというのが筆者の予想である。当たらなければ良いが、読者はどう思うだろうか。投資判断にも含めておく方が良いだろう。