Teslaの株価が空売り可能圏内に突入

世界的に株価がバブルに突入しつつあるが、筆者はまだ株価指数を空売りする気はない。しかし個別株のなかにはかなり高値になった銘柄がいくつか存在するので、今回はその1つを紹介したい。

Teslaの空売り

それはTesla (NASDAQ:TSLA)である。ヘッジファンド業界で空売りされている個別銘柄と言えばまず最初にこの銘柄が挙がるのではないか。

Teslaはカリフォルニアにある電気自動車メーカーである。創業者はイーロン・マスク氏で、彼はTeslaの他にSpaceXというロケットの打ち上げの会社を立ち上げたり、ネット番組でマリファナを吸ったりして話題になっている。

先ずは売上高と純利益を見てみたい。2018年の数字は次のようになっている。

  • 売上高: 215億ドル
  • 純利益: マイナス10億ドル

2019年は9ヶ月分しか出ていないが、売上高の成長率は19%である。成長率は確かに高い。それで株価も高くなっている。問題はその株価が相応かどうかである。

売上高の高成長はこれからも続くだろうか? それは売上高がその産業でどれぐらいの大きさかによる。例えばトヨタのように業界で一番大きい会社が20%成長を続けられるわけはない。

そこで、売上率を比べるためにアメリカの大手自動車メーカーのGeneral Motorsと比べてみたい。General Motorsの売上高と純利益は次の通りである。

  • 売上高: 1,470億ドル
  • 純利益: 80億ドル

2018年の数字であり、2019年の売上高成長率はほぼ横ばいとなっている。

General Motorsの売上高はTeslaの6倍あり、会社の大きさとしての違いは歴然である。では株価時価総額はどうなっているだろうか?

  • Tesla: 630億ドル
  • General Motors: 551億ドル

驚くことにTeslaの方が大きいのである。自動車メーカーの利益率に大差がないことを考えると、Teslaの売上高が近い将来6倍以上になることが織り込まれているということになる。

Teslaの過大評価の理由

ちなみにTeslaは比較的高価で見た目の良い電気自動車という売り出しで有名になったメーカーであり、General Motorsは大衆車も作っている。売上高は当然大衆車を作っている方が高くなる。つまり、株価に織り込まれているようにTeslaがGeneral Motorより大きくなるためには、Teslaはスポーティな自動車メーカーから大衆車メーカーへと変貌しなければならないということになる。

大げさに言えばポルシェがトヨタになるようなものである。それは合理的に考えればかなり難しいように見える。しかしそれが実際に株価に織り込まれているのである。

その理由は、Teslaの株価が自動車メーカーとして評価されていないからである。それは創業者イーロン・マスク氏のプロモーションの結果である。ロケットを打ち上げてみたり、マリファナを吸ってみたりすることで、何かをやってくれそうな創業者というイメージを演出し、実際には電気自動車メーカーであるにもかかわらずシリコンバレーのイノベーションの代表格のように謳われているのである。

しかし実際には自動車メーカーであり、スポーティーな電気自動車が売りのTeslaが大衆車メーカーとして巨大になるのは無理である。よって株価は妥当とは言えない。

最後にチャートを見てみよう。どの辺りならば空売りが出来るだろうか?

週足で長期のチャートを用意したが、やはり上がっても$350から$400が上限だろうという市場の判断なのだろう。そこまでしか上がっていないのは、上記の売上高の比較を見れば納得できる。

よって空売り銘柄としては$350から$400のレンジで売りに行けるだろう。こういう銘柄の値付けは不合理なので$400を超える可能性もなくはないが、その時は完全なバブルである。

1つ注意しなければならないのは、Teslaの空売りはヘッジファンドで非常に人気のある取引であるために、空売りに必要な貸株料が非常に高いということである。よって長い間はポジションを持っていられない。適度に下がったらすぐに売ることである。

よって空売りを開始するタイミングも重要となるが、そのためには米国株全体の値動きを考える必要があるだろう。ポイントは米中貿易戦争やイギリスEU離脱がまやかしの材料だということである。詳しくは以下の記事を読んでもらいたい。