ガンドラック氏、米国株の売却を推奨、代わりに買うべき銘柄を紹介

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が自社配信動画で2025年に投資すべき銘柄について述べている。

米国株の長期的な動向予想

債券の専門家であるガンドラック氏は、トランプ相場で債券市場の動きが話題になってからは、米国債に関する発言が光っている。

しかし今回はその他の市場についてのコメントである。まず米国株については次のように語っている。

投資家は、特にアメリカの投資家はそうだが、アメリカへの投資に極度に偏りすぎている。そしてそれは今後何年かの見通しを考えれば大きな間違いだ。

米国株が長期投資に向かないということは、そもそも今年に株価が暴落するより前から言われていたことである。

理由は2つある。1つの理由は、金利の長期的動向である。米国株が過去40年上がり続けたという理由で米国株を買っている人に対し、ガンドラック氏はその原因は金利の長期的低下だったと指摘した上で、次のように言っていた。

今の相場環境は長期的に金利が低下する相場ではない。1980年前半から2020年までの長期金利の13%の低下をもう一度繰り返せないということは、誰でも同意するだろう。

そして金利が低下しない局面における米国株のパフォーマンスは、以下の記事に書いた通りである。

2つ目の理由は、これも過去数十年続いてきた外国から米国株や米国債への莫大な資金流入が止まることである。

ドルが基軸通貨であることから、諸外国は米国株や米国債への投資をこぞって行なってきた。

だがウクライナ戦争以後、BRICS諸国や中東諸国はドルの保有を減らしており、しかも以下の記事で説明してある通り、ヨーロッパなどの国々も経済的・軍事的に余裕がなくなり、自国への投資に切り替えている。

どの国も余裕がなくなると自国にお金を使い始める。それで一番資金が流出するのは、基軸通貨ドルの国アメリカである。

欧州株を選好

逆に言えば、例えばヨーロッパなどではこれまでアメリカに行っていた資金が自国に戻ってくるということになる。

特にヨーロッパでは、アメリカがウクライナから手を引いていることから、自国の防衛産業に投資せざるを得なくなっており、それが現在、米国株が下落する中で欧州株は比較的上がっているという状況を引き起こしている。

ガンドラック氏は次のように述べている。

だからヨーロッパがもう一度産業化されるというシナリオを好んでいる。ヨーロッパに投資しているべきだろう。

ドイツ株は、最近の株安で一旦下がりはしたが、年始から見ると上昇を維持している。米国株や日本株とは大違いである。

原子力とウラン

また、セクターで言えばガンドラック氏が好んでいるのが原子力である。ガンドラック氏は次のように述べている。

原子力もとても繁栄するだろう。機能不全のエネルギー源に多くの資金が費やされていることに気づき始めているからだ。

恐らくガンドラック氏はいわゆる再生可能エネルギーのことを言っているのだろう。太陽光発電は雲が出れば動かず、風力発電は風がなければ止まる。水力発電は山や村を水没させるまごうことなき自然破壊である。

それでもエネルギー需要は止まらない。特にAIや暗号通貨は大量の電力を必要とする。ビットコインのマイニングが小さな国1つのエネルギー消費に匹敵していることはよく知られる。

ガンドラック氏は次のように続けている。

電力とエネルギーへの需要はどんどん増えている。だから原子力を選好している。それに関連しているのは、勿論ウラン関連の投資だ。銘柄には言及しないが。

ウラン価格の長期的な立ち位置は以下の通りである。

ウランは筆者も長期的に推している銘柄である。短期的には株安やアメリカの財政赤字削減による景気後退などのリスクをヘッジしなければならないが、2011年の福島原発の事故の水準を回復したばかりの水準まで下がってきており、まだ持っていない人は長期投資を考えて良い水準だろう。

また、原発銘柄としてはMicrosoftがAI用の電力供給の専属契約を結んだConstellation Energyがある。

こちらも米国株全体の下落リスクをヘッジした上で、株価が安いところを狙ってゆくのは悪くないだろう。

ゴールド以外のコモディティ

さて、最後にガンドラック氏が推しているのは金属やエネルギー資源、農作物などのコモディティ銘柄である。

ガンドラック氏は次のように述べている。

コモディティも好み始めている。コモディティはこの状況でもまっすぐ横ばいで、よく耐えている。

コモディティの中でもゴールドについてはガンドラック氏は前から推しており、ゴールドはもうかなり上がってしまった。

だから今回ガンドラック氏が推しているのはその他のコモディティである。

ガンドラック氏は次のように続けている。

コモディティはゴールドともかなり関連がある。ゴールドはロケットのように上がっている。

今ゴールドに投資すべきかどうかは分からないが、コモディティの値動きは良い。200日移動平均線は底打ちした。100日移動平均線は200日を上回った。50日は100日より上だ。コモディティは継続的に上がっている。

コモディティは全体的にはじわじわと上がってきている。ゴールドを上昇させている「ドルからの逃避」というシナリオが正しいのであれば、最終的にはそれは他のコモディティの上昇にも飛び火するだろう。

ガンドラック氏は特定のコモディティの名前を挙げていないが、例えば小麦などはまさにガンドラック氏の言うような底打ちに近い値動きを見せている。株安ともそれほど相関しているようには見えないのも魅力である。

ガンドラック氏は、投資のスパンについて次のように述べている。

コモディティを永遠に持ち続けたいとは思わない。高利回り債と同じように、ずっと持ち続けるものではない。だが戦略的に投資をするには良いだろう。

結論

いずれにしても、ガンドラック氏の投資方針は「ドルからの逃避」「アメリカからの逃避」である。

それはBridgewaterのレイ・ダリオ氏が著書『世界秩序の変化に対処するための原則』で解説している、覇権国アメリカの長期的な衰退トレンドである。

ガンドラック氏も、以下の記事で自分の話していることはダリオ氏が言っていることと同じだと言っていた。

ドル資産の凋落が始まろうとしている。


世界秩序の変化に対処するための原則