引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のCNBCによるインタビューである。
今回は怒涛の勢いで上がっている金相場についてコメントしている部分を紹介したい。
止まらない金価格上昇
金価格が上がり続けている。ガンドラック氏は次のように述べている。
ゴールドがまったく下がって来ない。高値付近で上下しているが、大きく売られることはない。ずっと3,300ドルや3,400ドル付近に滞在している。
金価格のチャートは次のようになっている。

ガンドラック氏は次のように続けている。
ゴールドはこれまでほとんど調整していない。ゴールドの保有者はほとんど何も心配せずに済んでいる。毎日価格は上下するが、価格水準はそれほど下がっていない。
過去数年で金価格は2倍になり、それが弱まるような兆候もない。
金価格上昇の理由
ゴールドは何故それほどまでに上がっているのか。金価格は普通、インフレ率と金利に反応する。インフレ率が高ければ紙幣の価値下落を避けるためにゴールドを買う人が増え、金利が低ければ紙幣を保有するインセンティブが薄れ、相対的にゴールドの価値が上がる。
だがアメリカのインフレ率はむしろ2%台まで下がっているし、金利も中長期的には横ばいで、金価格がこれほど一方的な上げを見せるほど低金利になっている事実はない。
だがそれでも金価格は上がっている。その理由はドルと米国債からの逃避である。
まず、以下の記事でジョニー・ヘイコック氏は、金価格上昇の原因は各国の中央銀行がドルを売って外貨準備にゴールドを買っていることだと指摘していた。ウクライナ戦争以後、アメリカが対ロシア経済制裁に協力しない国を制裁で脅して回っていることから、ドルを手放そうとする国が増えている。
また、今年4月の株安局面では、米国債が急落したタイミングでゴールドが買われる局面があった。
つまり、ドルと米国債から逃避している資金が次々にゴールドに流入しているのである。
米国債からゴールドへの資金逃避は続く
ガンドラック氏はこの動きがこれからも続くと考えている。ガンドラック氏は次のように続けている。
こうした動きは長期的なトレンドの始まりであり、わたしはそのトレンドに乗り続けている。状況が何か本質的に変わると思える根拠が出てこない限り、そうし続けるだろう。
ガンドラック氏は最近雇用統計が下方修正されたことにも注目し、次のように言っている。
アメリカ経済が弱まるなら、米国政府の税収は減少し支出は増えるので、米国債の発行量が増加することになる。
財政赤字は今のままでもGDPの7%なのだ。次の景気後退では財政赤字が3兆ドルや4兆ドルになることは目に見えている。長期の米国債にとって良いことではない。
米国債の量が増え、買い手が同じように増えないのであれば、米国債は下落するしかない。それが根本的な問題なのである。
結論
アメリカの財政赤字の状況を考えれば、ゴールドの上昇も米国債の下落も避けられないように思える。
問題は、米国債が下落すると米国株も下落するとレイ・ダリオ氏が予想していることである。
過去100年で米国債が大きく下落した例は2回ある。そしてその2回の両方で米国株も酷いパフォーマンスになっている。
その内の1回だった1929年から始まる世界恐慌の事例において米国株やドルがどうなったかについては、ダリオ氏が『巨大債務危機を理解する』で詳しく解説しているのでそちらを参考にしてもらいたい。
世界恐慌は、当時の基軸通貨だった大英帝国のポンドの終わりの始まりだった。ドルも今、同じ立ち位置にあると言える。