The Solid Ground Newsletterのラッセル・ネイピア氏が自身の運営するLibrary of Mistakesにおける講演で、ゴールドとシルバーについて語っている。
貴金属の価格高騰
今では世界中で紙幣が使われている。金貨や銀貨が使われている先進国はない。
だが、ゴールドとシルバーの価格が急上昇している。地政学的理由やアメリカの債務問題への懸念などにより、ドルから貴金属に資金が流出しているからである。
貴金属が少なくとも資産としてはドルの代わりになり始めている。だから、過去に貴金属が通貨として流通していた時代のことを学んでおくことは投資家にとって重要なことである。
通貨の歴史
ネイピア氏はアメリカを例に取って話を始めている。アメリカにとって通貨とはこれまでどういうものであったか。ネイピア氏は次のように言っている。
知っての通り、アメリカは1782年にパリ条約で独立した。その時、アメリカの通貨は無価値だった。独立戦争はアメリカの通貨の価値を破壊した。そして通貨をもう一度作り直さなければならなかった。
戦争は通貨の価値を破壊することが多い。レイ・ダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で述べている通り、基軸通貨を持つ国家が戦争で疲弊し、その通貨が破壊されれば、覇権国家の交代という事態にも繋がる。
アメリカは独立は果たしたが、通貨の価値は失ってしまった。
それでどうしたか? ネイピア氏は次のように続けている。
だからアメリカはまず他の国の通貨を使おうとした。
銀貨の歴史
ネイピア氏はある硬貨を手に持って次のように言っている。
これは1オンス銀貨だ。1515年から1978年まで、これは世界的に使われていた通貨だった。
今のように紙幣が普通に使われるようになるまで、世界は金本位制度だったと多くの人が習ったはずだ。だが、ネイピア氏は次のように言っている。
これは今朝買ったものだが、1851年の初期のスイスフランだ。何故これが世界的な通貨だったか? これがほぼ1オンスだと誰もが知っていたからだ。
ネイピア氏はアメリカの話に話題を戻して次のように述べている。
だからアメリカが通貨を持たない独立国家となった時、アメリカはスペインの通貨を使うことにした。
ドイツの通貨、ターラーも様々な場所で使われていた。イギリスのものもそうだ。
要するに、アメリカは自国の通貨が使い物にならなかったので、世界中に存在していた1オンス銀貨を使ったということである。
少なくともそれが銀で、それが1オンスである限り、どういう価値のものかは分かっているからである。
そこには、発行者の信頼は要らない。
そしてアメリカは次にどうしたか。ネイピア氏は次のように述べている。
アメリカは結局何をしたか? 1オンス銀貨を造った。
世界中で使われたシルバー
だからシルバーは、様々な国が発行した様々な銀貨という形でだが、世界中で使われていた。ネイピア氏は次のように説明している。
ほぼすべての国が同じことをした。そして重要なのは、使われたのはシルバーだということだ。そうすれば世界中何処でも使うことができた。
だが、数十年前まで世界は金本位制だったではないか。銀本位制ではなかったはずだ。
だがネイピア氏は、使われていたのはシルバーだと言う。ネイピア氏は次のように言っている。
だが、硬貨として流通していたのはゴールドではなかった。
何故なのか。ネイピア氏は次のように説明している。
今、1オンスのシルバーは1979年以来始めて50ドルの価値を持っている。だから今これは50ドル分の購買力を持つと言える。
それは小さくない購買力だが、この購買力でビール1杯や食事を買うことは不可能ではない。
銀貨は、硬貨にした時にちょうど良いくらいの価値を持っていたのである。
だが、同じサイズのものをゴールドで作るとどうなるか。
ネイピア氏は次のように続けている。
制度としては金本位制だった。だが経済で実際に流通していたのはゴールドではなかった。1オンスのゴールドは今どれだけの価値か? 4,000ドルだ。これでビールを買おうとすれば、膨大な量になる。
人々は、金貨を使ってはいなかった。というか通常、金貨は日常の支払いに使用できるようなものではなかった。
これからゴールドとシルバーが世界経済でどういう役割を果たすのかを考える上で、これは重要なポイントである。
大英帝国のポンドやオランダ海上帝国のギルダーも含めて、過去に使われていた通貨がどのような運命をたどったかについては、ダリオ氏の『世界秩序の変化に対処するための原則』で解説されているのでそちらも参考にしてもらいたい。
