DoubleLine Capital創業者のジェフリー・ガンドラック氏が、Bloombergのインタビューで、長らく続いてきたドル神話の崩壊について語っている。
ドルの下落
ドルの立場が危うくなっている。日本では円がそれ以上に酷いため、ドルが下がっているという認識はあまりないかもしれないが、今年、ドルは他の通貨に対して大きく下落している。
以下はドルの強さを示すドル指数のチャートである。

アメリカの債務問題
何故こうなっているかと言えば、トランプ大統領がアメリカの債務問題をドルを犠牲にして解決しようとしているからだ。
コロナ後のインフレと金利上昇で、これまでどれだけあっても金利はほぼゼロだった大量の米国債に、多額の利払いが発生するようになった。
米国債の利払いは新たな米国債の発行で賄われるので、これからは米国債の量は米国政府が何もしなくても毎年指数関数的に増加してゆくことになる。
実際、米国債の利払いは今やアメリカの財政赤字の半分ほどにも達している。
米国債の量が指数関数的に増え、米国債の買い手が同じようには増えないのだとしたら、長期的には米国債の需要と供給は数学的に崩壊を免れない。これは数学的事実である。
これまで好んでいた銘柄からシフトするとき
何十年もの間、ドルは強い通貨だった。コロナ後に紙幣印刷で現金給付を行ったにもかかわらず、金利上昇によってドルはむしろ上がった。
だが、そこから状況が変わってしまった。今や利払いの増加は財政赤字を圧迫している。需要と供給の問題が数学的事実として投資家の頭のなかにある。
ガンドラック氏は次のように言っている。
長く続いたパラダイムからシフトをすることは難しい。
投資の世界で一番難しいことの1つは、長らく成功した投資を方向転換することだ。
長く成功しているポジションを、それはもう駄目なポジションだから利益確定しろと自分に言い聞かせるのは難しい。
だが、長期投資であれ短期投資であれ、永遠に上がり続ける銘柄はない。いつかは心変わりして利益確定しなければならない。
だが投資家にはそれが難しい。ガンドラック氏は次のように続けている。
何かに投資をしてそれが上手く行けば、それは経済的にも感情的にも心理的にも満足感を与える。
だから人々は過去の成功にしがみつき、それが未来にも起こると思い込もうとする。
ドルからの逃避
ガンドラック氏はドルについて次のように言っている。
わたしはドルしか持たない投資家だった。もう何十年も他の通貨を持っていなかった。
だが18ヶ月前、わたしは引き金を引かなければらなかった。「このパラダイムはもはや有効ではない、ドルに賭け続けるとお金を失う」と言わなければならなかった。
それで今年、ガンドラック氏はドルからゴールドに持ち替えた。それが大当たりしたわけである。
金価格は以下のように推移している。

結論
古くなったパラダイムから人より早く逃れることは難しい。だが、金融市場ではそれが出来た人間にだけ利益が与えられる。トランプ政権の金融緩和は、ドルにとって極めて重要なターニングポイントになるだろう。
また、パラダイムシフトを予想することについてはニール・ハウ氏の『フォース・ターニング』が名著であるので、以前の記事を紹介しておきたい。
