ネイピア氏: 政府債務の問題でハイパーインフレが来るのは、政府が国民から税金を取り尽くしてから

The Solid Ground Newsletterのラッセル・ネイピア氏が、The Observatoire des Erreurs de Montréalでの講演で政府債務とハイパーインフレの関係について語っている。

政府債務とハイパーインフレ

政府債務はもう長らく社会問題となっている。それはリーマンショックの時代から言われていたが、ゼロ金利の時代においては、政府は借金に利息を払わなくても良く、債務がどれだけあっても何の問題も生じないように見えた。

だが緩和のやりすぎでコロナ後にインフレになって、インフレ対策のために金利を上げなければならなくなると、莫大な政府債務に多額の利払いが生じ、今やアメリカの財政赤字の半分は利払いという状態になっている。

政府債務の問題についてよく言われるのが、債務問題を放置するとハイパーインフレが起きるというものである。

だがネイピア氏は次のように述べている。

ハイパーインフレという言葉がよく使われるのを聞く。政府債務が巨額であるとき、人々は「ハイパーインフレが来るぞ」と言う。

だがハイパーインフレは来ないだろう。

ハイパーインフレが来ない理由

ハイパーインフレが来ないというのは安心ではないか。だが、ネイピア氏は、ハイパーインフレが来ないというよりは、ほとんどの先進国は現状ではハイパーインフレを引き起こす必要がないと言っている。

何故か? ネイピア氏は次のように続けている。

政府は国民の貯蓄を盗めるのに、それほどの紙幣印刷をする必要があるだろうか?

民間に大きな貯蓄がまだ残っているとき、その国がハイパーインフレになったことはない。ハイパーインフレは、すべての人々の貯蓄を使い果たした後に来る。

ハイパーインフレと言えば、人々は第1次世界大戦の後のドイツを思い浮かべるだろう。ドイツは多額の負債を抱え、その負債はデフォルトした。

ドイツ政府は国民の貯蓄を使い果たしたので、国民からお金を借りることができなかった。だから紙幣を印刷するしかなかったのだ。

ジンバブエも、旧ユーゴスラビアもそうだ。紙幣印刷をそれほどの規模で行うのは、貯蓄を使い果たした後だ。

結論

政府は国民に課税できる。それがどのような理由で積み上げられた政府債務であれ、それが積み上げられた時には生まれてさえなかった若者に対しても、政府は税金の納付を強制できるのである。

政府は政府債務の問題に直面するとき、様々な選択肢から一番政治的にやりやすいものを選ぶだろう。

だからトランプ大統領は、米国債の利払い増加の問題を金融緩和で解決しようとしている。

だが、数百パーセントのハイパーインフレにはならないだろう。それを引き起こすことは、増税によって国民の収入や貯金から奪い取ることよりも政治的コストが今のところ高いからである。

ネイピア氏は、このカナダにおける講演で次のように続けている。

だから良いニュースがある。カナダはハイパーインフレにはならない。だが悪いニュースもある。その理由は、まず国民の貯蓄が使い果たされるのが先だということだ。

これはすべての先進国にあてはまることだ。

そして、逆に言えば、国民のすべての貯金が使い果たされるとき、ハイパーインフレが起きるということである。実際にそうなったアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領が以下の記事で興味深いことを語っている。

20世紀の大経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエク氏は、著書『貨幣発行自由化論』において次のように言っていた。

人類の歴史は大まかにいってインフレの歴史であり、インフレは政府によって政府の利益のために引き起こされた。

通貨の歴史を研究する者なら誰でも、政府が2000年以上もの長い間、人々を騙して搾取するために通貨を恒常的に使ってきたことをなぜ我慢しなければならなかったのかと疑問に思うことを避けられないだろう。

だがインフレには順序がある。日本もアメリカも、ハイパーインフレが来るより前に、増税とコロナ期のような「マイルド」なインフレが長く続く時期が来るのだろう。


貨幣発行自由化論