世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が、自身のブログで2025年を振り返り、2026年の金融市場を俯瞰している。
2025年の米国株
読者にとって2025年はどういった年だっただろうか。ポートフォリオの中で良かったもの、悪かったものはどういう銘柄だろうか。
米国株を保有している投資家は多い。米国株は去年上がったため、持っていて良かったと思っている人が多いだろう。
しかしダリオ氏は米国株について次のように述べている。
ほとんどの人が米国株、特にAI銘柄が最高の投資で、2025年の最大の投資アイデアだったと考えているが、2025年の最大の投資リターン(したがって最大の投資アイデア)は通貨の価値が変化したことによって生じ、米国株のパフォーマンスは他の国の株式にもゴールド(それが主要銘柄の中で最高の投資だった)にも大きく劣っているということに疑いの余地はない。
多くの個人投資家がS&P 500やAI銘柄を熱心に眺めている一方で、著名ヘッジファンドマネージャーにとっては2025年はドルの価値下落の年だった。
ダリオ氏は次のように事実を並べている。
ドルは円に対して0.3%下落し、人民元に対しては4%、ユーロに対しては12%、スイスフランに対しては13%、ゴールドに対しては39%下落した。
通貨の下落と資産価格
2025年にドルは下がった。ドルの価値を示すドル指数のチャートは次のようになっている。

この事実に多くの日本人が気づいていないのは、日本円がドルと同じように下落しているからである。
しかし日本人は為替市場と言えばドル円しか見ないので、ドル円が変わっていなければ何も変わっていないと考える。しかし上のダリオ氏の指摘を見れば、ドルと円が仲良く下落していることが分かる。
問題は、個人投資家が例えばS&P 500のパフォーマンスを価値の下落しているドルや円を基準に考えていることである。
先進国の通貨はどこも下落している。インフレとはそういう意味である。
だから個人投資家たちが好むS&P 500は、確かにドルや円で見れば上がっているかもしれないが、考えなければならないのは、その上昇分のどれだけが実際にS&P 500の価値が上がった分であり、どれだけが通貨の価値下落によって価値が上がったように見えているだけなのかということである。
これを考えるためには、価値の下がっていないものを基準にして株価を考える必要がある。
だからダリオ氏は次のように言っている。
2025年の最高の投資はゴールドの買い(ドル建てで65%の利益)で、S&P 500(ドル建てで18%上昇)を47%も上回っている。
言い方を変えれば、S&P 500はゴールドを基準にすれば28%下落した。
結論
もちろん、ここでは2024年から推奨してきたゴールドは2025年の金融市場における勝者であるため、勝者であるゴールドと比較するのは少々酷ではあるだろう。
だがここの読者を含め、ドルや円の価値を懸念している人々は実際にドルや円をゴールドやシルバーに持ち替えており、そうした人々から見れば、紙幣の価値下落という2025年から2026年の巨大トレンドに乗らず、ドルや円やS&P 500を持ち続ける理由は理解できないだろう。
重要なのは、どの国の紙幣の価値も下落しているということである。そしてそれこそが2026年の最大の投資テーマである。
円の価値が危ういからドルに持ち替えても、ドルも大きく下落しているのだから、その逃避に何の意味があるだろうか?
ダリオ氏は次のように述べている。
自国の通貨が下落するとき、その通貨で計算されるものの価格が上がるように見える。つまり、弱い通貨を基準に投資のリターンを考えると、実際よりもパフォーマンスが良く見えてしまう。
価値の下落する通貨でものの価値を計ってはならないというのは、以下の記事で解説した通り、かのアダム・スミス氏が有名な『国富論』で分かりやすく警告してくれていることである。
NISAについてのネット記事を読むのではなく、こうした価値ある古典を読むべきである。しかしそうする人は少ない。だから個人投資家はゴールドやシルバーではなく、ドルやS&P 500を持っているのである。
