フォン・グライアーツ氏: ビットコインはゴールドの代わりにはならない

Von Greyerzのフォン・グライアーツ氏が自社配信動画の中で、通貨の代わりとしてのゴールドとビットコインを比較しているので紹介したい。

ドルの代わりとしてのゴールド

フォン・グライアーツ氏は長らくゴールドを推しており、その予想はまさに当たり続けている。

金価格が高騰しているのは、アメリカの財政問題や地政学リスクを懸念した中東諸国やBRICS諸国の中央銀行が、ドルを売ってゴールドに持ち替えているからである。

ビットコインは紙幣の代わりになるか

一方で、紙幣印刷によって紙幣の価値が薄まることを懸念する世の中で、ゴールドの他に注目されているのがビットコインである。

だが、フォン・グライアーツ氏はビットコインに関して次のように言っている。

ビットコインや他の暗号通貨がゴールドの代わりになると思っている人は多いが、われわれの考えではそれは事実ではない。

何千年も通貨として存在し続けているものを、コンピュータやUSBメモリの中に存在する、それ自身で価値を持たないものが置き換えることはできない。

ドルやその他の紙幣は政府が価値を薄めるから持つべきではないと考えるフォン・グライアーツ氏は、ビットコインがその代わりになるとは考えていないようだ。

フォン・グライアーツ氏の考えは、ある意味においてはフェアではないと言える。例えばゴールドに「それ自身の価値」がどれだけあるのか。ゴールドの用途と言えば美術工芸品や歯科治療だが、それだけで今の金価格の大幅な上昇が説明できるわけもない。

だからゴールドの価値の大半も「それ自身の価値」から来ているわけではないのであり、投資家が単に紙幣の代わりになると考えているからに過ぎない。その点ではビットコインとほとんど同じである。

リスク調整後リターン

だが、プロの資産運用家であれば誰でも考えるリスク調整後リターンというものを考えてみれば、フォン・グライアーツ氏の考えにも一理があると言える。

フォン・グライアーツ氏は次のように言っている。

ビットコインは確かに100万ドルにもなるかもしれない。だが同時に、価値がゼロになるかもしれない。

資産保全という観点から見れば、そのようなリスクを取ることはできない。

暗号通貨が果たして本当に紙幣の代わりになるのかどうか、ビットコインが例えば20年後もちゃんと資産価値を持っているのかどうかは、そうなっている未来も十分有り得るだろうが、確定した未来ではまったくない。

暗号通貨、特に現物による裏付けや政府による法的強制力のない暗号通貨が、20年後には忘れ去られているという未来も、暗号通貨がこのまま数十年世界に流通し続けるという未来と同様に、有り得ることである。

一方で、数千年の間人類によって通貨の代わりとして認められてきたゴールドが、2025年や2026年に急に通貨の代わりとしての価値を失うことは考えづらい。

だから、そうしたリスクを割り引いた上で考えれば、ビットコインがゴールドより魅力的な資産となるためには、そのリスクの分だけビットコインはゴールドよりも高いリターンを上げなければならないわけである。それこそがリスク調整後リターンの考え方である。

また、今一番の問題は、そうしたリスクにもかかわらずビットコインのパフォーマンスがゴールドに大幅に負けていることである。

金価格は次のように推移している。

ビットコイン価格は次のように推移している。

結論

そもそもフォン・グライアーツ氏は個人投資家に投機のアドバイスをするインフルエンサーではなく、ヨーロッパやアメリカの富裕層を相手に資産の保全の助言をする金融家である。

だから、リスクがあってもリターンが大きければ良いということではなく、そもそもそうしたリスクがあってはならないのである。

フォン・グライアーツ氏は、資産保全以外の目的でビットコインを保有することを否定しているわけではない。フォン・グライアーツ氏は次のように述べている。

ビットコインは決算システムとしては機能するかもしれない。投機の対象としては使えるかもしれない。だが、資産の保全にビットコインを使うことはできない。

だが、本当の意味での紙幣の代わりとしては、ゴールドが良いだろうということである。

だが同時に個人的には、フォン・グライアーツ氏が言うようにゴールドを永遠に持ち続ければ良いとは考えていない。1970年代のインフレの時代にそうだったように、インフレが終わればゴールドはこれまで上がっていた分暴落してゆくだろうからである。

だからゴールドを盲目的に持ち続けるのではなく、天井を見極める目が必要だと考えている。詳しくは以下の記事で解説しているので、そちらも参考にしてもらいたい。