Von Greyerzのジョニー・ヘイコック氏が、世界中の投資家がドルからゴールドへと資金を資金を避難させていることと金相場の関係について、自社配信動画で語っている。
金価格の高騰
金価格が高騰している。アメリカの債務問題が金融緩和によって解決されるという予想と、ドルを持っていればアメリカに経済制裁されかねないと感じたBRICS諸国や中東諸国がドルを売ってゴールドに持ち替えていることから、金相場のチャートは次のようになっている。

ここではゴールドを去年から何度も取り上げてきた。ゴールドは当初、債務と金融緩和を懸念する少数の投資家が着目している資産クラスに過ぎなかったが、ここまで大きく上がったことで少しずつ金融業界の脚光を浴びてきている。
ヘイコック氏は次のように言っている。
わたしのMorgan Stanley時代の同僚であり友人であるマイク・ウィルソンが、株式と債券を60:40に割り振る伝統的なポートフォリオの代わりに、株式と債券とゴールドを60:20:20にするポートフォリオを提案し、物議を醸している。
彼は通貨の価値下落とインフレに対応するためには従来のポートフォリオでは不十分だと主張している。
60:40は海外の資産運用業界で「伝統的」とされるポートフォリオだ。デフレかつ低金利の環境では、金融緩和で株式も債券も上がったため、それが上手く行く組み合わせだったのである。
インフレ相場におけるポートフォリオ
しかしヘイコック氏は、これまで何度もデフレ相場とインフレ相場はまったくの別物だと主張し続けている。
前回の記事では例えば、ハイテク株が株式市場を牽引してきた過去25年のトレンドは終わり、別の銘柄が主役になると言っていた。
そして株式や債券からゴールドへのシフトもインフレ相場への変化の一環である。
だが、ヘイコック氏は友人の主張するように投資家が資産の20%をゴールドにすることは不可能だという。
ヘイコック氏は次のように説明している。
だが投資家がゴールドを20%も保有することは不可能だ。すべての投資家がそんなことをするために十分な量のゴールドはこの世界には存在しないからだ。そんなことをすれば、金価格は馬鹿げた水準まで上がってしまう。
ゴールドが投資家のポートフォリオの1%を占めるだけでもほとんど不可能だ。
金相場というものが世界の金融市場において今どれだけの大きさかということを理解していれば、ヘイコック氏の言っていることが分かるだろう。
これを理解するために、ヘイコック氏の上司であるフォン・グライアーツ氏が次のように言っていたことを思い出したい。
今、ゴールドは世界中の金融資産の0.5%に過ぎない
結論
金相場は、世界中の投資家の主要な資産クラスになるにはあまりに小さすぎるのである。
だから例えば、世界中の投資家のポートフォリオのゴールドの保有率が0.5%から1%になれば、ゴールドの需要が倍になるということになる。
だがインフレや紙幣の価値下落から逃れられる資産はゴールドの他にはほとんどない。シルバーは、ゴールドよりも更に小さい市場でしかない。
これこそが、インフレ相場になると貴金属が何十倍にも高騰する理由である。以下の記事で説明した1970年代の物価高騰時代の貴金属の価格上昇を思い出したい。
しかしそれでも、インフレが懸念されれば投資家はゴールドを買うしかない。そしてトランプ政権はアメリカの債務問題を金融緩和で解決しようとしている。
ゴールドの保有率が、例えば0.5%から10%になれば、つまりゴールドの需要が20倍になれば、金価格はどうなるだろうか?
今の金価格高騰とはそういうものである。それがどこまで続くかについては、以下の記事を参考にしてもらいたい。
また、アメリカ版アベノミクスの予想についてはBridgewaterのレイ・ダリオ氏が新著『How Countries Go Broke』(仮訳:なぜ国家は破綻するのか)で詳しく解説している。日本語版はないが、英語が読める人はそちらも参考にしてもらいたい。
