ヘイコック氏: 株式市場の主役はハイテク株からコモディティ株に切り替わる

Von Greyerzのジョニー・ヘイコック氏が、自社配信動画でインフレの環境下における株式市場の主役交代について語っている。

デフレ相場からインフレ相場へ

ここの読者にはお馴染みの話だが、著名投資家たちはコロナ以後、相場がデフレ相場からインフレ相場へとシフトしたことを意識している。

1970年代の物価高騰時代に金価格が高騰し米国株が酷いパフォーマンスだったように、インフレ相場では貴金属が有利で、株式は不利だということである。

実際、2025年の相場では金価格は米国株とは比較にならないほど上がっている。以下は金価格のチャートである。

これまではデフレによる低金利で金融資産が値上がりすることを投資家は狙ってきたわけだが、これからはインフレと紙幣の価値下落から逃げるため、投資家や各国の中央銀行がドルなどの紙幣から貴金属に資金を逃避させるのである。

ヘイコック氏はこうした動きについて次のように言っている。

過去20年間は金融資産がもてはやされた時代だったが、これから10年、20年は現物資産の時代になるということをあらゆる徴候が示している。

インフレ相場における株式市場の主役

現状、インフレはある程度収まっているが、アメリカも日本の債務の問題がある。そして少なくともトランプ政権は債務の問題を金融緩和で片付けようとしている。

デフレの時代も金融緩和だったが、同じ金融緩和でもインフレになれば金融市場はまったく別の様相を呈する。

以下の記事で解説した1970年代の物価高騰時代の米国株の推移を見れば明らかである。

だが、上の記事では株式市場全体の話しかしていない。今回ヘイコック氏が話しているのは、株式市場の中でどの銘柄が主役になるかという話である。

過去20年はハイテク株の時代だったと言えるだろう。最初はMicrosoft、次はApple、そして今ではNVIDIAである。

しかしそれはデフレと低金利の時代、まだAIそのものは大した売上を上げていないにもかかわらず、債務によってデータセンターなどに大量の投資が行われ、そのお金によってAI関連銘柄の株価が高騰することができる時代の話である。

しかし金利が上がれば、AIが未来に実現する大きな売上を前借りするような大規模な設備投資はできなくなるだろう。

それこそが、ヘイコック氏の言うインフレ相場における株式市場である。そして相場の起爆剤は「負債」から「現物資産への資金流入」へと変化する。

ヘイコック氏は次のように言っている。

債務とインフレがこれから大きな問題になる。そしてそのことは、投資家にこれまでとはまったく違うポートフォリオが要求されるということを示している。

そしてそのことによってコモディティ銘柄が上がる。ソフトウェアやハイテクのような、現在誰もが持っているようなアメリカが主役のポートフォリオから入れ替わるわけだ。

農作物や卑金属、エネルギー資源などのコモディティ銘柄は、そのほとんどが貴金属の上げ相場からは置いていかれている。ヘイコック氏はそれが出遅れだと見ているようである。

結論

だが多くの投資家はまだインフレ相場のマインドで株式市場に投資している。しかしトランプ政権の金融緩和を経て、負債と金利上昇が本当に問題になるとき、投資家は気づき始めるだろう。

ヘイコック氏は次のように続けている。

そしてほとんどのファンドマネージャーは、この時代の変化に対してポートフォリオをまだ調整していない。

ほとんどのファンドマネージャーは、インフレの環境においてどう資産運用すべきなのかということが分かっていないのだ。

「ポートフォリオをまだ調整していない」とは、つまりこれから片方が売られ、もう片方が買われるということを意味している。

これからの相場のテーマはインフレ、金利上昇、負債、紙幣の価値下落である。

これからの相場はどうなってゆくのか。金融緩和とインフレによってドルや米国経済がどうなるかということについては、Bridgewaterのレイ・ダリオ氏が新著『How Countries Go Broke』(仮訳:なぜ国家は破綻するのか)において詳しく予想している。

日本語版はないが、英語が読める人はそちらも参考にしてもらいたい。


How Countries Go Broke