世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が、FTによるインタビューでトランプ政権とFed(連邦準備制度)の金融政策について語っているので紹介したい。
トランプ大統領と中央銀行
トランプ大統領のFedに対する圧力がニュースになっている。トランプ氏はかねてよりパウエル議長に対して大幅な利下げを要求しているほか、最近ではクック理事を不正疑惑で解任すると発表した。
トランプ氏によるFedへの利下げ圧力について、ダリオ氏は次のように語っている。
現在アメリカで起きている政治的・社会的な出来事は、1930年代に世界中で起きたことを思い出させる。
金利が不自然な水準まで引き下げられ、米国債がもはや良い投資先だとは考えられなくなると投資家が判断するほどに中央銀行の独立性が失われれば、ドルの価値は不健全なレベルで下落してゆくだろう。
ドルの下落
あまり特定の銘柄に関する相場予想を公表することのないダリオ氏だが、ドルについては珍しく下落の予想をはっきりと表明している。
トランプ政権の望む金融緩和がドルを下落させると考えているからである。
そして、ドルからの資金逃避と言えば、思い出してもらいたいのが去年のゾルタン・ポジャール氏の予想である。
ポジャール氏は、ドルから資金が逃避することによって、必然的に米国債が買い手不足に陥ると予想していた。
それが今現実に起きようとしている。ダリオ氏は次のように述べている。
国外の投資家たちが地政学的状況から米国債の保有を減らし、ゴールドの保有を増やしている状況下で政府と中央銀行の関係がこのようになっていることは、長期的なサイクルの終盤に見られる典型的な兆候だ。
サイクルの終盤というのは、何十年も積み上げられたアメリカの債務問題も「終わり」に差し掛かっているということである。
ウクライナ戦争以後、アメリカは自国に協力的ではない無関係の国々にドルを使った経済制裁をちらつかせており、アメリカの都合で資産が凍結されないよう、多くの国の中央銀行が外貨準備のドルの保有を減らしている。
その結果、ゴールドの上昇はもはやまったく止まっていない。

結論
紙幣への信頼がゆらぎ、貴金属に資金が逃避するシナリオは、ここでは去年から何度も繰り返し記事にしてきたテーマである。大当たりと言っても良いと思うが、しかしあまりに当たり前の動きではないか。
そしてポジャール氏やダリオ氏の予想によれば、それは最終的に米国債の買い手不足に発展する。
ダリオ氏は次のように述べている。
トランプ政権の予算計画で示されているような大きな支出は、比較的近い将来アメリカに債務過多による心臓発作を引き起こすだろう。おそらくは今から3年前後だ。
「心臓発作」とは買い手不足で米国債が急落することである。
ダリオ氏はこうした予想を新著『How Countries Go Broke』(仮訳:なぜ国家は破綻するのか)で詳しく説明している。
英語版しか出ていないが、日本も登場するので、英語が読める人は読んでみてほしい。

How Countries Go Broke