レイ・ダリオ氏: 米国株はバブルだ

世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が、CNBCのインタビューで2025年米国株の上昇について語っている。

米国株の上昇

米国株は、何だかんだで史上最高値付近にある。トランプ関税がきっかけとなった4月の株価下落など、投資家はもはやほとんど覚えていないだろう。

アメリカの株価指数S&P 500のチャートは次のようになっている。

米国株のバリュエーションは、去年末の時点でかなり高かった。当時のローゼンバーグ氏の記事を読めば、その分析が少なくとも妥当であることは誰にも分かるだろう。

そして今、米国株はそこから更に10%程度上がっている。かなりの割高であることには何も変わりはない。だが、2000年のドットコムバブルで米国株のバリュエーションは空まで上がったように、割高であるかどうかは短期的な株価見通しとはほとんど何も関係がないのである。

ダリオ氏の相場観

ダリオ氏は現在の米国株について次のように言っている。

株式市場がバブルなのは間違いない。

ダリオ氏にとってバブルであることの定義は、長期的に持続不可能な資金の流れによって支えられていることである。

だが、長期的に持続不可能であることは、短期的に何処までも上がることを否定しない。

では、米国株は短期的には何処まで上がるのか。ダリオ氏はバブルがピークになる条件について、次のように語っている。

重要なのは未来の企業利益ではない。

バブルにとって重要なのは、未来が素晴らしいかどうかではない。投資家が現金を必要とするかどうかだ。

例えば資産税や金融政策の引き締めなどがあれば、人々はバブルになっている資産を売って支払いのための現金を作らなければならなくなる。

ダリオ氏は、バブル崩壊のきっかけとなるのはバリュエーションそのものではなく、投資家が何らかの理由でその資産を現金化しなければならなくなることだと言っている。

1929年世界恐慌の事例

ダリオ氏は、1929年から始まる世界恐慌の引き金となった1929年の米国株バブル崩壊を例に出している。

当時のアメリカの株式市場は、電気の普及という技術革新を織り込んで大きく上がっていた。

AIを織り込んで大きく上がっている今の株式市場と似ていると言える。

ダリオ氏は次のように説明している。

1929年には、電気の普及を反映して様々な企業の株価が上がった。General ElectricやRCAなどの株式だ。

そしてこうした企業の株価は90%下落した。ファンダメンタルズが理由ではない。バブルが崩壊した最初の原因は、投資家が現金を必要としたからだ。

トマス・エジソン氏が設立したGEは今も存在する。電気の普及に大きく恩恵を受けた企業であることも事実だ。だが、1929年に株価が崩壊した時には、他の株と同じように株価が90%下がった。

2000年のドットコムバブルでも同じである。当時、Amazon.comやMicrosoftなどの株価がほとんど同じくらい下落した。誰もが知っての通り、Amazon.comやMicrosoftはインターネットの普及によりその後素晴らしい業績を上げることになる。

だが、株価バブルが崩壊する時には素晴らしい企業も暴落する。その理由は、何らかの理由により投資家が株式を売って現金を確保しなければならなくなるからである。

ダリオ氏は次のように説明している。

資産そのものは消費することはできない。換金するためには、まずその資産を売って、現金を得てから必要なものを買わなければならない。

バブルはその時に崩壊する。古典的な原因は金融引き締めだ。だが資産税のようなものが原因になることもある。

上がった時にファンダメンタルズは関係なかったのだから、下がる時にもファンダメンタルズは関係ないということである。

2025年の株価バブル

2000年のドットコムバブルを崩壊させたのも、2008年のサブプライムローンのバブルを崩壊させたのも、金融引き締めだった。

今は逆に、トランプ政権が金融緩和を推している。だから割高であろうが何であろうが株価が上がっているのである。

さて、現在の米国株のバブルはこれからどうなるのか。ダリオ氏は次のように述べている。

1929年や2000年のバブルを100%だとすると、今のバブルの度合いは80%だ。

それは、バブルがここで終わることを意味するわけではない。バブルが終わるにはそれを破裂させるものが必要だ。

例えば、4月の株価下落では、米国債とドルの下落によって機関投資家が米国債を損切りしなければならなくなったことによる米国債の急落が事態を悪化させた。

バブル崩壊はそうしたテクニカルな要因が原因で起こるとダリオ氏は言っているのである。

そして、トランプ政権が金融緩和を望む限り、それを破裂させる原因は直近では見当たらないというのがダリオ氏の見方なのだろう。

同じように、ポール・チューダー・ジョーンズ氏なども2000年のドットコムバブル崩壊前夜に似ていると言っている。だがそれは、バブルが今崩壊することを意味するのではない。

バブルはいつ崩壊するのか。それを予想するためには、ドットコムバブルや世界恐慌の時に株価がどのようにして崩壊したのかを知っておく必要があるだろう。

1929年からの世界恐慌での事例については、ダリオ氏が著書『巨大債務危機を理解する』で他のバブル崩壊とともに詳しく解説してくれているので、そちらも参考にしてもらいたい。


巨大債務危機を理解する