レイ・ダリオ氏: 米国債暴落が回避される可能性は5%

世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が、デイヴィッド・ルービンスタイン氏のインタビューでアメリカの財政赤字の問題とそれを取り巻くワシントンDCの状況について語っている。

アメリカの財政赤字

コロナ後のインフレで金利が上昇して以来、ダリオ氏はアメリカの財政赤字の問題を気にしている。

コロナ前までは誰も気にしていなかった大量の米国債に金利上昇によって多額の利払いが発生しており、その利払いは新たな米国債発行によって賄われるので、このままではアメリカの国債発行量は指数関数的に増えてゆくことになるからである。

ダリオ氏は次のように言っている。

政府の収入に対して債務を増加させないためには、財政赤字をGDPのおよそ3%に下げなければならない。現在、財政赤字は6.5%か7%だ。つまり4%下げる必要がある。

もしそれをやらずに赤字を放置し、債務をむしろ増やして状況を悪化させるようなことがあれば、米国債の需要と供給の関係に問題が生じるだろう。

これは財務長官であるスコット・ベッセント氏も同意しており、彼も財政赤字を下げると言っているのだが、実行が伴っているかは微妙なところだ。

財政赤字を解決し、米国債の発行量の指数関数的増加を阻止できなければ、米国債の買い手の方は指数関数的に増えるどころかむしろ減っているので、何処かのタイミングで米国債が買い手不足により下落することは避けられない。

その兆候は4月にあった。株価とドルと米国債の同時下落があったからである。それでトランプ政権は関税を延期せざるを得なくなった。

国債の価格下落は金利上昇を意味するので、それは金利が上がるということである。

金利が上がったことで債務危機になりかけているのに、債務危機によって金利が上がると、米国債は金利上昇の負のスパイラルに陥ることになる。

ダリオ氏は次のように述べている。

そうなればアメリカは景気後退と債務危機を同時に迎えることになる。

アメリカは債務問題を解決できるか

アメリカは財政赤字を3%まで減らし、このシナリオを避けることが出来るのか。

ダリオ氏はアメリカがどうすれば状況を打破できるかを明確に語った。だから司会者は、アメリカが財政問題を解決できる確率はどれくらいかと聞いた。

ダリオ氏は次のように答えた。

5%だ。

ちなみにダリオ氏は、この答えをかなり渋い顔をして言った。

あまりに悲観的な見積もりではないか。ダリオ氏は先日ワシントンDCで共和党と民主党の政治家と財政赤字について議論して、赤字の解決はどうも無理ではないかという印象を抱いたらしい。

議論の詳細は上記の記事に譲るが、政治家たちは政府支出を減らし増税を行うと、有権者から選挙で落とされると怯えているらしい。

ダリオ氏は今回、この時の様子を次のように補足している。

興味深いのは、彼らがわたしにこう頼んだことだ。「財政赤字を3%まで下げない政治家は無責任だというトレンドを作ってくれ、そうすれば有権者が財務問題解決を後押ししてくれるようになる」

結論

これがワシントンの政治家たちの現状らしい。実際に彼らと話したダリオ氏の感想は、投資家にとってアメリカの財政問題(そして長期金利)がどのようになっていくかを予想する上で有益な情報を与えてくれる。

財政問題が解決されなければ、米国債は指数関数的に増えてゆく一方で、米国債の買い手は減っている。

だからダリオ氏の言うように、何処かのタイミングで米国債が価格を維持できなくなることは避けられないだろう。

ダリオ氏はかねてからそのタイミングを1年から3年の間だと言っている。

まだ猶予はあるが、過去に米国債の下落が止まらなくなったときに金融市場がどうなったかを考えるために、ダリオ氏は著書『巨大債務危機を理解する』において、1929年からの世界恐慌で市場がどうなったかを解説している。

歴史的な知識が問われる相場が近づいている。ダリオ氏が5%だと言った時の顔が忘れられない。


巨大債務危機を理解する