世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が自身のブログでゴールドに投資すべき時とそうでない時について語っている。
金価格上昇
金価格が急騰している。ゴールドについてはここでは去年から記事にしており、ここの読者には今更言うまでもないだろう。
金価格はもう2年上がり続けている。チャートは次のように推移している。

筆者のように、去年からゴールドを買って美味しいところを取ることができる投資家は良いが、一般の人々にとっての問題は、ゴールドはいつ買っていつ売れば良いのかということである。
筆者はドルの価値が完全に落ち切るまで売らないつもりで、それはまだまだ先だと考えているが、最終的にはドルからゴールドへの資産逃避需要が落ち着くタイミングは来て、その時にはゴールドのバブルは終わると考えている。
いつ買っていつ売るべきか
ゴールドはいつ買っていつ売るべきなのか。ダリオ氏は次のように言っている。
ゴールドを買ったり売ったりするタイミングを図るゲームは、やらないことをお勧めするが、もしやるのであれば、通貨や国債の価値下落やデフォルトのリスクを差し引いても金利が高いと言える時には、通貨を持って金利をもらった方が良い。
しかし紙幣や国債の価値下落やデフォルトのリスクに対して割に合わない金利しか付かないのであれば、ゴールドを持つのが賢明だろう。
ダリオ氏は個人投資家がマーケット・タイミングを当てる勝負をすることに否定的である。ダリオ氏はかつて、次のように言っていた。
短期売買をするということは、毎年何億ドルもの資金を費やして市場で勝負しているわれわれのような機関投資家を相手にポーカーをやるようなものだ。それが個人投資家の戦わなければならない相手なのだ。それは無理だ。そんなことをしてはいけない。
だから、ダリオ氏は金投資についても次のように言っている。
投資家はそういうゲームをやるよりも、単に一定量のゴールドを保有し続けるのが良いだろう。ゴールドは、預金と同じように、長期的にはおよそ1.2%の低い実質リターンを持つ。
金投資のパフォーマンス
ダリオ氏の1.2%という数字に驚いた人もいるだろう。ゴールドは、ここ2年1.2%どころではない速度で上がっているからである。

だがよくよく考えてみれば、ゴールドは預金や国債のように金利が付くわけでもなく、株式のように事業が毎年利益を生むわけでもない。
ゴールドは何も価値を産まず、今年と来年で(価格以外の意味での)価値が何か変わるわけでもない。それは、本質的には価値が下がることがない(そこが買われて今上がっている)が、同時に価値が上がることもないことを意味する。だから、そもそも値上がりしたり値下がりしたりする方がむしろ不思議なのである。
だから、長期的に見ればゴールドのリターンとはその程度のものだ。それが、インフレや政府の債務問題が懸念される時期にはとんでもない上がり方をするというだけのことなのである。
したがって、その美味しいところだけを取ることができる投資家でないのであれば、ゴールドの保有で期待できるパフォーマンスは本来1.2%だ。
だが、それでも美味しいところで買って売りたいと考える人々に対してダリオ氏は次のように助言している。
ポートフォリオ内のゴールドの保有量を戦略的に変えることについて言えば、経済的・物理的戦争や政府による資産没収のリスクが高く、金融システムが崩壊に向かっている時にはゴールドを持つべきで、そうでない時には保有を減らすべきだ。
何故ならば、長期的に見れば、ゴールドは(現金のように)比較的パフォーマンスの高くない資産クラスだからだ。それは、ゴールドには生産性がないからだ。
現時点ではどうか。トランプ政権は、アメリカの債務問題を何とかするために金融緩和によってドルの価値を下げようとしている。
ドルとゴールドの先行きについては、ダリオ氏は新著『How Countries Go Broke』(仮訳:なぜ国家は破綻するのか)で詳しく書いている。日本語版はないが、英語が読める人はそちらも参考にしてもらいたい。
