フォン・グライアーツ氏: 紙幣印刷で金相場は1970年代の25倍上昇を繰り返す

Von Greyerzのエゴン・フォン・グライアーツ氏が自社の動画配信で、上昇が止まらない金相場について語っている。

金価格上昇

金価格が上がっている。多くの人は米国株の動きばかり気にしているが、ゴールドは米国株など比較にならないほど上がっている。

その理由は、一部の投資家と世界各国の中央銀行がドルからゴールドへと逃避しているからである。

それはトランプ大統領がFed(連邦準備制度)に金融緩和を迫っていることと密接に関係している。

トランプ大統領がFedに金融緩和を迫っているのは、発行過多により買い手不足に陥りつつある米国債を支えさせるためである。

1971年ニクソンショック

そして米国政府が自分の財政を支えるためにドルの価値を犠牲にした事例は過去にもあった。ニクソン大統領が、当時ゴールドと交換できたはずのドル紙幣を、ゴールドとの交換を取りやめると発表した1971年のニクソンショックである。

ゴールドと交換できるからこそ誰もが持っていた紙幣が、正真正銘ただの紙切れとなった事件である。

しかし何とも交換できなくなった紙切れを、奇妙なことに今でも人々は大事に財布に入れている。

フォン・グライアーツ氏は当時のことについて次のように語っている。

1971年、わたしはスイスの銀行で働いていたが、8月15日にニクソン大統領が金本位制度を廃止した。

ニクソン氏はこれはドルの下落を止めるための一時的な措置だと言った。

だが、誰もが知っての通り、それは一時的な措置ではなかった。現在ドル紙幣を持っていてもゴールドを入手することはできない。通貨の価値に関する政治家の言葉を信用してはならない。

そしてその結果、金価格は上がった。というかほぼすべてのものの価格が上がった。何故か? ドルの価値が下がったからである。

インフレとはものの価値が上がることではなく、紙幣の価値が下がることである。

フォン・グライアーツ氏は次のように続けている。

ニクソン氏はアメリカ国民や投資家たちに「あなたのポケットにあるドルの価値は将来も同じだ」と言った。

彼が当時理解していなかったのは、当時35ドルだった金価格が今では3,500ドルになっているということだ。

つまりドルで計算すれば金価格は100倍になったということだが、反対に考えればゴールドで計算したドルの価値が99%下落したということだ。

つまりニクソン氏は間違っていた。

1970年代の金価格高騰

結果として、1970年代はインフレ率が15%近くまで上がる物価高騰の時代となり、金融市場はインフレ相場となった。

インフレを避けるため、人々はインフレヘッジ資産を買い漁った。その筆頭がゴールドだった。

フォン・グライアーツ氏は次のように言っている。

結果として、金価格は35ドルから1980年1月の850ドルまで25倍に上がった。

詳しくは以下の記事を参考にしてもらいたい。この時ちなみにシルバーも同じくらい上昇している。

結論

今回のフォン・グライアーツ氏の動画のタイトルは「25倍: 1971年から1980年の金価格上昇が帰ってくる」である。

つまり、当時と同じようなゴールドの上昇相場になることをフォン・グライアーツ氏は予想しているのである。

何故そうなるのか。フォン・グライアーツ氏は次のように説明している。

紙幣を基準に計れば、ゴールドは時間経過で常に上昇する。政府と中央銀行が紙幣の価値の破壊を続けるからだ。有権者の票を買って権力を維持するために彼らはそうせざるを得ない。

だからゴールドの上昇相場は中央銀行と政府によって保証されている。彼らが紙幣の価値を破壊することによってゴールドを常に支えてくれるからだ。

有難い話ではないか。ちなみにフォン・グライアーツ氏はシルバーも今回も同じようになると予想しており、シルバーは出遅れていると言っている。

政府が紙幣の価値を下げ続けるなら、現物資産の時代が来ることは間違いない。金属やエネルギー資源、農作物などのコモディティへの投資の本はあまりないのだが、ジム・ロジャーズ氏の『商品の時代』は古い本ではあるが入門書になるので、以下に紹介しておきたい。


商品の時代