アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏が友人で政治家のフィル・グラム氏との対談し、富裕層とその富について語っている。
今回は、グラム氏が富裕層を擁護している場面をまず取り上げたい。
保守派とリベラル派
この対談はなかなか興味深い。グラム氏はサマーズ氏の友人で、元々は民主党の政治家だったが40年ほど前に共和党に鞍替えした人物である。
一方でサマーズ氏はクリントン政権の財務長官を務め、トランプ大統領を批判するなどリベラル派の論客として知られる。
つまりこの対談は、友人同士でありながら保守派とリベラル派の討論でもあるのである。
テーマは富と不平等についてである。グラム氏は、最初からなかなか飛ばした発言をしている。
グラム氏は次のように述べている。
わたしは平等と自由が宿命付けられた永遠の敵同士だという原則を信じている。
リベラル派のサマーズ氏が眉をひそめるような言葉である。
自由と不平等
平等と自由が敵同士だとはどういうことだろうか? グラム氏は次のように説明している。
不平等は競争の自然な結果だ。
わたしは不平等を問題だとは思わない。
元々民主党員だったとは思えないような自由主義的な言葉である。オーストリア学派最大の経済学者であるフリードリヒ・フォン・ハイエク氏が『貨幣発行自由化論』で同じようなことを言っていた。
だから、グラム氏は富裕層が裕福であることを擁護している。グラム氏は次のように言っている。
一部の人々は誰かが大金持ちだという事実を攻撃する。だが、例えばイーロン・マスク氏を例に取りたい。
わたしは田舎に住んでいて、家には衛星アンテナがある。世捨て人なわけではないが、これまで人と大いに関わって生きてきたから、誰もドアをノックしないような生活が好きなのだ。
だが家には衛星アンテナがあって、インターネットが使える。
そして、マスク氏の衛星回線は以前のサービスの10分の1の価格で、そして3倍優れている。
マスク氏の提供する衛星経由のインターネット回線、スターリンクのことだろう。そしてこの状況をグラム氏は次のように表現している。
マスク氏は金持ちだ。だが、その結果、わたしもより豊かになっている。
結論
民主党から共和党に鞍替えしたグラム氏は、生粋の共和党員よりもむしろ共和党的である。
つまり、富裕層は他人を豊かにした結果豊かになったのであり、それは他人から責められるようなことではないということである。
ハイエク氏が『貨幣発行自由化論』において、政府が金持ちから税金を取り上げて自分の票田にばら撒く行為について次のように言っていたことを再び掲載しておこう。
自分で得たわけでも他人が放棄したわけでもないものを得る権利を特定の人々に与えることは、本当に窃盗と同じような犯罪である。
さて、一方のリベラル派のサマーズ氏は、グラム氏の言葉を静かに、しかし納得はしていないという顔で黙って聞いていた。サマーズ氏がグラム氏の言葉にどう反応したかは、次の記事で紹介してゆきたい。