グリフィン氏: 市場は米国のインフレ悪化の可能性を過小評価している

Citadel創業者のケン・グリフィン氏がBloombergによるインタビューでアメリカ経済の見通しについて語っているので紹介したい。

トランプ政権の経済政策

アメリカ経済は分岐点にあるのかもしれない。インフレ率は2%台まで下がった。しかし、トランプ政権になってからの数字はかなり上がり調子となっている。

そしてトランプ政権はその状況でFed(連邦準備制度)に金融緩和をさせようとしている。

そして、元々は財政赤字の問題に対処すると言っていたトランプ大統領だったのだが、アメリカの財政赤字はそれほど改善されていない。

この状況についてグリフィン氏は次のように言っている。

トランプ政権の行動は明らかにアメリカの経済成長を活性化することに焦点が置かれている。

そうした状況が米国市場に見られる熱狂の原因となっている。

インフレ率は2%台だが上昇基調にある。

考えてみれば当たり前である。トランプ大統領はそのような経済政策をしている。グリフィン氏は次のように続けている。

景気後退の時に行われるような財政緩和と金融緩和が、ほとんど完全雇用となっているような今の状況で行われている。

だからアメリカ経済がやや過熱状態になっていることは間違いない。

アメリカのインフレ動向

インフレ率が上昇基調にある状況で大幅な利下げをしようとしているのだから、株価がこれまで上がってきたことも当然である。

だがそんな状況で緩和をして、インフレはどうなるのか? グリフィン氏は次のように言っている。

高インフレの問題はまだ解決されていない。

だが、金融市場はインフレをそれほど心配しているようには見えない。金利もむしろ下がっている。以下はアメリカの長期金利のチャートである。

グリフィン氏は次のように言っている。

インフレの魔神はビンに戻るというほとんど確信に近いものが市場を支配している。だがそう結論するのは極めて時期尚早だと思う。

トランプ政権の移民対策、財政支出、金融政策を考えれば、今の状況は極めてインフレ的な環境だ。

にもかかわらず、金融市場はインフレが大きく悪化するシナリオに対してあまりに無反応であり過ぎている。

結論

筆者もインフレに関するグリフィン氏の見解に同意する。

トランプ政権がインフレ率が上がっている状況で利下げしようとしていることの意味を、金融市場は過小評価している。市場は何処かのタイミング(恐らくは来年前半か)で、そう簡単に緩和ばかり出来るわけではないという現実に向き合うことになるだろう。

インフレが緩和に牙を向く時が来る。だが、それはまだ来ていないようである。

もしその時にトランプ政権がインフレ退治より緩和を少しでも優先する素振りを見せれば、レイ・ダリオ氏が予想するドル暴落のシナリオが具現化するのだろう。

ダリオ氏のシナリオについては、ダリオ氏の新著『How Countries Go Broke』(仮訳:なぜ国家は破綻するのか)で詳しく解説されている。英語が読める人はそちらも参考にしてもらいたい。


How Countries Go Broke