DoubleLine Capital創業者のジェフリー・ガンドラック氏が、UBSによるインタビューでアメリカ経済の見通しについて語っている。
アメリカの利下げ
Fed(連邦準備制度)は利下げしようとしている。パウエル議長は渋々ながら、9月に9ヶ月ぶりの利下げを行った。
パウエル氏は失業率が上がっていることを理由に「念のため」利下げしたのだが、渋々だった理由は、インフレ率が2%台とはいえ上昇してきているからである。
今、アメリカのインフレ率は2.9%だが、インフレに関しては考慮すべき大きな要素がある。トランプ政権の関税である。
関税とインフレ
関税についてはパウエル氏もFOMC会合後の記者会見で言及していて、彼のコメントを再掲しておこう。
消費者にとっては、関税から来る物価上昇圧力は今のところかなり少ない。われわれが思っていたよりも小さく、ゆっくりだ。
ガンドラック氏もパウエル氏と同じことを次のように言っている。
関税が物価に反映されるまでには多少時間がかかっている。
だが、ガンドラック氏によれば関税の影響が出るのはこれからだと言う。ガンドラック氏は次のように続けている。
しかしわれわれの考えでは、Fedが自分で表明している2%のインフレ目標を達成する上で、関税は障害になるだろう。
われわれのインフレモデルでは、関税はインフレ率を0.5%ほど上昇させる可能性がある。そして、インフレ率はパウエル議長が指摘したように、既に上昇トレンドにある。
インフレ率は既に2.9%で、0.5%を足すと3.4%だが、そもそもそれでなくともインフレ率は上昇トレンドにあるのである。
そして一番の問題は、この状況でFedが利下げし、しかも利下げを続けようとしていることである。
利下げとインフレ
利下げはこれからどうなるのか。ガンドラック氏は次のように述べている。
わたしが考慮するのは2年物米国債の金利が政策金利と比べてどうなっているかだ。
2021年にFedが利上げを始めた時には、2年物国債の金利は先回りして2%程度まで上昇していた。
コロナ後の物価高騰でFedが利上げした時には、パウエル議長はインフレが重大な状況だという事実から現実逃避し、その結果利上げは大幅に遅れてしまった。
その時、今後2年の政策金利の動向を織り込んで推移する2年物国債の金利は、Fedが結局は利上げに追い込まれると見込んで先に上昇していた。
そして今、2年物国債の金利はどうなっているか。チャートは次のようになっている。

これについてガンドラック氏は次のようにコメントしている。
もっと最近、過去2年で言えば、2年物国債の金利はすべての月で政策金利より低くなっている。
現在、2年物国債の金利は政策金利よりもおよそ0.65%低い。それは、わたしがFedはこれから更に利下げすると考える理由の1つだ。
結論
ガンドラック氏の主張を纏めると次のようになる。アメリカのインフレ率はこれから上がってゆくが、Fedはそれでも利下げする。
それはやはり、レイ・ダリオ氏が新著『How Countries Go Broke』(仮訳:なぜ国家は破綻するのか)で予想している、アメリカの債務問題は通貨安政策によって解決されるというシナリオではないのか。
トランプ政権が利下げをしたがっているのは、コロナ後の金利上昇で米国債の利払いが急増しているからである。
より詳しくはダリオ氏の新著に書いてある。日本語版は出ていないが、英語が読める人はそちらを参考にしてもらいたい。