米国時間9月17日、アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は金融政策決定会合であるFOMC会合の結果を発表した。
事前の予想通り0.25%の利下げが行われ、政策金利は4.25%から4%に引き下げられた。
9ヶ月ぶりの利下げ
パウエル議長がついに利下げに踏み切った。最後に利下げした去年12月から9ヶ月ぶりの利下げであり、トランプ大統領が散々利下げ要求をした後のようやくの利下げでもある。
Fedはこれから更に利下げを行うことが想定されており、奇しくも去年と同じく9月の利下げ開始ということになった。
パウエル議長はFOMC会合後の記者会見で今回の利下げについて次のようにコメントしている。
これは念のための利下げだと考えてもらいたい。
「念のため」という言葉にパウエル議長の利下げへの警戒が表れている。まるで、本当は利下げしたくないのだが、もし金利が高すぎたと後で分かるような可能性に備えて一応利下げしておく、とでも言いたいかのようである。
つまり、やはりパウエル氏は利下げにそれほど積極的ではないように見える。一方で、Fedにはトランプ大統領からの刺客がどんどん送り込まれている。
トランプ大統領に新たに任命されたマイラン理事は、より大きい0.5%利下げを要求して0.25%利下げに反対票を投じた。パウエル議長自身も、来年5月の任期終了にともないトランプ大統領に新たな議長に置き換えられることになる。
アメリカ経済の状況
パウエル議長はアメリカ経済をどう見ているのか。利下げに慎重な言い方はしているものの、経済減速のリスクもパウエル氏は理解しているようだ。
パウエル氏は次のように述べている。
一方で、労働市場の状況はまったく違うリスクを示唆している。
労働市場は減速しており、われわれは更なる減速が必要だとも思っていなければ、そうなってほしいとも思っていない。
失業率はまだ低いとはいえ上向いており、雇用の増加は減速し、雇用の減速リスクは増加している。また、インフレも最近上昇し、いくらか高い水準に留まっている。
金利は高く保っておきたいが、経済に減速してほしくはないという矛盾した思いが読み取れる。失業率は緩やかにだが着実に上がっており、今月発表された8月の失業率は遂に4.3%に達した。

インフレ懸念
だがパウエル氏はそれでもインフレを気にしているようだ。利下げすればインフレが懸念され、利上げすれば失業率が更に上がるかもしれない。パウエル議長がスタグフレーションのプレッシャーを感じているのが分かる。
アメリカのインフレ率は、1年間の変化率を見る前年同月比で見れば2.9%と2%台にまだ収まっているのだが、毎月の変化を見るために、毎月の変化を1年分換算にして並べた前月比年率で見れば、以下のようにかなり上がってきているのである。

失業率で見れば妥当な利下げも、インフレ率を見れば本当にこの状況で利下げするのかという状況に見える。
だからパウエル氏は次のように言っている。
0.5%の利下げへの広範な支持はなかった。
過去5年間、非常に大きな利上げと非常に大きな利下げをこれまで行なってきたと思う。だがそれは金融政策が経済とずれており、急いで方向転換をしなければならない場合に行うことだ。
それは今わたしが感じている状況とはまったく違う。わたしは今年のこれまでの金融政策は正しかったと感じている。
結論
会合後には会合参加者の今後の政策金利の予想をプロットしたドットプロットが発表されたが、そこでは年内にはあと0.5%の利下げ、来年はそこから0.25%の利下げが見込まれている。
今年の0.5%の利下げは金利先物市場の予想と同じだが、来年の0.25%利下げに関しては市場予想の0.75%利下げに比べてかなり少ない。
パウエル議長の記者会見での発言を考えても、トランプ政権の利下げ要求に比較的抵抗したFOMC会合だったと見るべきだろう。
どちらにしても来年5月以降はパウエル議長が退任し、トランプ氏が指名する新たな議長により金融緩和が本格化する可能性が高い。
だがその時にアメリカのインフレ率は金融緩和を許容する状況にあるのだろうか? インフレ率とFedの動向を注視しなければならないだろう。