DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がCNBCのインタビューで日本国債と米国債の動きについて語っている。
世界的な金利上昇
最近、海外の金融業界で話題になっているものがある。日本の金利である。
ガンドラック氏は次のように述べている。
長期金利はアメリカだけでなく、世界中で上がっている。日本でさえもだ。
どれだけの日本人がお気づきだろうか。ガンドラック氏が何のことを言っているのかさえ、多くの人は分からないのではないか。
ガンドラック氏が言っているのは、日本の30年物国債の金利のことである。
日本の超長期金利
日本の超長期の金利がここ半年で大きく上がっていることを読者はご存知だろうか。ガンドラック氏は次のように言っている。
日本の長期国債の金利はドイツの金利と同じ水準になっている。
30年物日本国債の金利は次のように推移している。

日本と言えば、世界規模で見ても超低金利の象徴だった。コロナ後にインフレになった時でさえも、日本だけが低金利を維持した。アメリカとヨーロッパは金利を上げた。
だがいつの間にか30年物日本国債の金利は3%近辺まで上がっており、これはドイツの30年物国債とほぼ同じ水準である。
もはや低金利とは言えない水準まで上がってきているが、問題は去年から1%も上がったその上昇速度である。
日銀の植田総裁はこれを憂慮し、今月の決定会合でこれまで行なっていた国債買い入れ減額のペースを落とす決定をした。黒田元総裁の紙幣印刷政策を元に戻すよう努力していた植田総裁だが、30年物国債の金利急上昇にペースダウンを余儀なくされた形となる。
また、財務省は同じく金利急上昇を受けて、30年物国債の発行を減らす計画を表明している。金利が上昇した30年物国債で資金調達すれば、利払いが増えてしまうからである。
明らかに日本国債から資金が流出しており、それを受けて日銀と財務省が慌てる形となっている。どう考えてもまずい状況が始まっている。
アメリカでも金利急上昇か
政府債務が200%を超える日本では、少しの金利上昇で日本国債に大きな利払いが発生してしまう。日本は少しの金利上昇でも許容できないのだが、日本政府がそういう状況に陥っていると債券投資家たちが認識すれば、ますます日本国債から資金が流出するだろう。
そしてガンドラック氏は次のように、更に恐ろしいことを予想している。
こうなっている大きな理由こそが政府債務と財政赤字なのだ。
日本国債でそうなっているように、アメリカでも30年物米国債から買い手が逃げ出すタイミングが来ると思う。
そして政府はそれをどうにかしなければならなくなる。
日本では既に日銀と財務省が国債市場に脅されている。ガンドラック氏はアメリカでも同じ状況になると言っている。
結論
ここではもう去年からずっと言っているが、これがBridgewaterのレイ・ダリオ氏が著書『世界秩序の変化に対処するための原則』で予想しているアメリカや日本の衰退から財政破綻へのシナリオである。
先進国も破綻するということを、ダリオ氏は主張した。歴史上実際にそうなってきたのだということをダリオ氏は著書で詳しく解説している。
それでもダリオ氏の予想を最初は誰もそれを真に受けなかった。しかし、ここでは逐一報じている通り、それは着実にひとつずつ現実になってきている。
ここから具体的にはどう推移するのだろうか。ガンドラック氏は次のように述べている。
金利が市場の望むままに上がり続けることに政府が耐えられなくなったとき、特に、そうならないことを祈るが、戦争が悪化したとき、政府は長期金利を直接押さえつけなければならなくなるかもしれない。
日銀が国債買い入れの減額ペースを落としたのは既にそのシナリオの一部だろう。結局、植田総裁も国債下落には降伏しなければならないのか。
アメリカでも同じように政府が債券市場に降伏しなければならない瞬間が来る。そうなれば中央銀行は紙幣印刷で米国債を救い、そしてドルが犠牲になるだろう。

世界秩序の変化に対処するための原則