チューダー・ジョーンズ氏: 株は高い時に買って低い時には売れ

引き続き、Tudor Investment創業者のポール・チューダー・ジョーンズ氏のCNBCによるインタビューである。

今回は、恐らく他の著名投資家ならまったく逆のことを言うだろうということをジョーンズ氏が言っているので、紹介してみたい。

200日移動平均線

今回の話はトレーディングの戦略についてである。株の買い時、売り時を投資家はどう決めるべきなのだろうか。

ジョーンズ氏が大事にしている指標は、投資家なら誰でも知っているものだ。ジョーンズ氏は次のように言っている。

わたしはいつも200日移動平均線を一番の基準として使う。

200日移動平均線とは、直近200日分の株価の平均の線で、日々の値動き見ていれば激しく動くこともある株価が、大きなトレンドとしてはどのように進んでいるのかを可視化したものである。

株価チャートには大体この線が引かれていることが多く、株価がこの平均の線より上にあれば平均より上がっていて、下にあれば平均より下がっているということになる。

上昇トレンドか、下落トレンドか

要するに、ジョーンズ氏は移動平均線の上下で、株価が上がっているのか下がっているのかを分けているのである。

そして、ジョーンズ氏にとって重要なのは、移動平均線の上にある時と下にある時で、株価はパフォーマンスが明確に分かれるということである。

ジョーンズ氏は次のように言っている。

アメリカの株式市場における200日移動平均線を考えると、例えば今は経済政策が緩和的な状況で、中央銀行は利下げしようとしている。

株式市場は、200日移動平均線の上にある場合には、平均的にはリターンが倍になる。

移動平均線の上にあるということは、株価は上がっているということである。

株価は上がっている時の方がパフォーマンスが良い。ジョーンズ氏によれば、それが統計的事実ということである。

これは、株価の上昇トレンドが長期的に見れば10年ほど続くということが関係しているかもしれない。リーマンショックは2008年であり、その後の大きな下落はと言えば、2018年の世界同時株安を一時的なものとみなすのであれば、2020年のコロナショックだった。

だから、株式市場では上昇トレンドに乗ってしまえば、よほど運が悪くなければそのまま数年上昇トレンドに乗れることが多いということになる。

そして逆に、株価が移動平均線を下回っている場合のパフォーマンスはどうか。ジョーンズ氏は次のように言っている。

逆に200日移動平均線の下にある場合には、緩和していようが引き締めしていようが、平均リターンはひと桁に下がる。

結論

著名投資家の間ではかなり珍しいとも言えるが、ジョーンズ氏はかなりの程度テクニカルトレーダーなのである。

ジョーンズ氏は次のように言っている。

トレンドだ。トレンドというものが非常に重要なのだ。

200日移動平均線の下では良いことは何も起きない。どんな資産でもだ。

多くの著名投資家は、むしろ投資とは安くなった時に買い、高くなった時に売るべきものだと考えるだろう。Bridgewaterのレイ・ダリオ氏が次のように言っていたのが好対照に思い出される。

最悪の考え方とは、「この資産はこれまで良いパフォーマンスを上げているから、この資産はこれからも良い投資なのだ」と考えることだ。価格がこれまで上がったというのは多分、より割高になったということだ。ある資産が途方もなく割高になり、それを理由にあなたがこれは素晴らしい投資対象だと考えるとすればどうだろう。

読者はどちらに同意するだろうか? 少なくとも言えることは、ダリオ氏のやり方が長期投資的であるのに対して、ジョーンズ氏のやり方では、トレンドに乗るべきタイミングが重要であるのと同様に、トレンドから逃げるタイミングも重要になるということである。

ジョーンズ氏は投資家というよりはトレーダー気質なのである。ジョーンズ氏は著名投資家のインタビューを集めた『マーケットの魔術師』において、トレーディングのやり方を詳しく説明しているので、そちらも参考にしてもらいたい。


マーケットの魔術師