エリザベス女王: 中国高官一行は非常に無礼だった

イギリスのエリザベス女王がバッキンガム宮殿で開かれたパーティーで、中国の習近平国家主席がロンドンを訪れた際、中国の政府高官たちは「非常に無礼だった」とコメントしたとガーディアン(原文英語)が報じている。

引用元には動画も掲載されているが、女王が宮殿の庭で当時の警備担当者たちと会話をした時のもので、女王らは中国を批判するというよりはむしろ淡々と、苦笑を交えながら当時のことを振り返っている。イギリス人は、中国人とはそういうものだと諦めているのである。

以下はその会話を翻訳したものである。イギリス王室の雰囲気を伝えるもので、イギリスの中国に対する態度を理解する上で役に立つだろうと思う。


チェンバレン卿:陛下、こちらは中国の国家主席のロンドン訪問の際に警備の責任者だったルーシー・ドーシ司令官です。

エリザベス女王:あら、それは不運だったわね。

一同:(笑)

チェンバレン卿:ドーシ司令官は中国人たちから非常に、非常に無礼な扱いを受けましたが、彼女は自分を落ち着かせて職務を全うしました。こちらは彼女の母親で、子供の権利の保護などの社会活動をしているジュディス・コプソン氏です。

コプソン氏:わたしは娘をとても誇りに思います。

チェンバレン卿:(ドーシ司令官に)その時のお話を是非陛下に。

ドーシ司令官:はい、わたしは当時警備の責任者でした。陛下がご存知だったかどうか分かりませんが、あれはわたしにとって試練の時でした。

エリザベス女王:知っていましたよ。

ドーシ司令官:本当に試練だったのです。あの時、彼らは「(イギリス側が準備をしていた)訪問はキャンセルされた」とだけ言って去っていったのです。その時わたしは…

エリザベス女王:彼らは大使に対して非常に無礼でした。

ドーシ司令官:本当にその通りでございました。大使もわたしと一緒に居たのですが、彼らは突然のキャンセルに対し何のフォローもなしにそのまま去って行きました。

エリザベス女王:それはすごいわね。

コプソン氏:本当にその通りで。有り得ないことです。

ドーシ司令官:非常に無礼で非常に配慮のないことだと思いました。


具体的にどの日程がキャンセルとなったのかは分からないが、思い出されるのは習近平国家主席以前に李克強首相がロンドンを訪問した際、「女王に謁見できなければ訪英は中止する」と脅しをかけて顰蹙を買った時のことである。

この時は結局、イギリス側が中国の我儘を聞いて謁見が実現しているが、この時李首相は「ヒースロー空港に敷かれたレッドカーペットの長さが短い」などと文句をつけて(FT、原文英語)イギリス国民の更なるどん引きを招いていた。だからイギリス王室はもう慣れているのである。

ちなみに中国政府はイギリス側のこうした批判(というよりは感想)に対して、共産党の機関紙で「イギリス国民は中国に対して偏見を持って」おり「英国社会全体の偏狭さを映し出すものに他ならない」(ロイター)と主張している。

自分の無作法を棚に上げてそう言うのはいいが、とりわけイギリスのような礼儀を重んじる国においては、中国の野蛮さをより印象付ける結果になるだけである。無礼な人間が不平を言い、礼節をわきまえた側が耐えなければならないのは何処の国でも同じである。

イギリスは長年、中国人の無礼な振る舞いに耐えながら外交をしてきた。イギリスの対中外交については以下の記事で取り上げた通り、歴史的に三跪九叩頭の礼などの野蛮な風習に一歩引きながらも外交的なスタンスを維持してきたのである。この記事は未読の読者には是非読んでもらいたい。習近平氏のロンドン訪問を取り上げた時のものである。

今回の件で一番面白いのは、エリザベス女王がカメラの前でこれらの発言をすることを一切躊躇わなかったという事実である。これらの会話は、カメラが偶然収めたのではなく、カメラの前で堂々と行われている。

イギリス王室はもうずっとイギリス政府から中国側の歓待を押し付けられており、女王としてはいい加減にしてほしいのだろう。日本人には良く分かる心境ではないか。