ドラッケンミラー氏: 米国株は金利上昇の圧力で崩壊する

ジョージ・ソロス氏のSoros Fund Managementを長年運用していたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏がRobin Hood財団主催のインタビューで米国株の見通しについて語っている。

インフレと金利高騰

ドラッケンミラー氏は2021年から物価高騰を警告し、その後の金利高騰による株式市場と実体経済への悪影響を予想し続けてきた著名投資家の1人である。

そしてアメリカの長期金利は、Fedがもう数ヶ月も利上げを停止しているにもかかわらず、構わず上昇してきた。

それが米国株の重しとなっている。米国株は次のように推移している。

何故株価が下落しているのか? 長期金利が上昇すれば、投資家はリスクを取って株式を保有しなくとも単に長期国債を保有すれば十分な金利が得られるからである。

ドラッケンミラー氏の個別株戦略

さて、ドラッケンミラー氏はこの状況で米国株をどう見ているか。

バイデン政権の行なっている景気刺激は的が非常に絞られている。ほとんどはグリーンエネルギー向けだ。

それが株式市場で投資機会を生むかもしれない。

いわゆる「国策に売りなし」である。政府が国民から徴収した税金を特定の企業にばら撒くとき、その企業の株価は上がる。

また、ドラッケンミラー氏は以前から推してきたAI銘柄にも焦点を当てている。彼は次のように述べている。

AI業界では大きなことが起こっている。そこに投資機会があるかもしれない。

ドラッケンミラー氏は以前よりNVIDIAやMicrosoftなどのAI関連銘柄を推している。

ドラッケンミラー氏はアメリカ経済の景気後退入りを予想しているが、それでも優れた銘柄はそれほど影響を受けないのではないかと踏んでいる。

NVIDIAについては以下の記事でも取り上げている。

ドラッケンミラー氏の米国株見通し

ここまでがドラッケンミラー氏の個別株に対する見方である。では米国株全体に関してはどうか。

ドラッケンミラー氏は米国株について次のように言っている。

可能性は低いかもしれないが、世界大戦が起こる危険もあり、株価収益率が20倍から30倍もの米国株に喜んで投資をするような状況ではない。

ここから半年はどうなるだろうか? 少なくとも最近の下落で高いバリュエーションのいくらかは吐き出された。

米国株の現在の問題は金利上昇である。金利が高ければ株式市場から金利の高い国債に資金が流出する。

そして金利が上がっている原因は、大量に発行された米国債に十分な買い手がいないことである。

そして一部の企業が恩恵を受ける景気刺激はこの問題を悪化させる。何故ならば、借金だらけの米国政府が景気刺激をするには、買い手のいない米国債を更に発行して投資家に買ってもらわなければならないからである。

そうすれば金利は更に上がることになる。ドラッケンミラー氏は次のように言っている。

だがまさにその景気刺激が金利の上昇圧力を与え、株式市場における他のすべてのものを崩壊させる。

金利と株価の問題は非常に単純である。国債の金利が5%前後で推移している時に、誰が下落のリスクを負って株式を買うだろうか?

多くの著名投資家が同じように考えている。

ちなみにチューダー・ジョーンズ氏はこのインタビューで司会をやっており、ドラッケンミラー氏の聞き手に回っている。何とも贅沢なジョーンズ氏の使い方である。

筆者の意見は以下の記事を参考にしてもらいたい。金利と株価の関係について論理的な反論があれば聞いてみたいものである。