世界最大のヘッジファンド、株高予想発言の裏で欧州株空売り

アメリカ初の世界同時株安が継続する中、様々な著名投資家が今後の株式市場の動向を予想しているが、中でも一番強気な発言をしていたのが世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏だった。

しかし、このダリオ氏率いるBridgewaterが強気発言の裏で欧州株を空売りしているとBloomberg(原文英語)が伝えている。空売りとは株価が下落すると利益の出る投資のことである。

株式に強気ではなかったのか?

先ず、レイ・ダリオ氏は市場の急落が始まる前の1月に、世界経済フォーラム(通称ダボス会議)でかなり高飛車な発言をしていた。

あらゆる場所に現金が積み上がっている。投資家の現金だけではなく、銀行や企業も大量の現金を抱えている。だから市場はこれから大量の現金に溺れることになる。それは強力な緩和となり、市場は恐らく吹き上がることになるだろう。言葉を変えれば、現金をそのまま保有している投資家は馬鹿を見ることになる。

強烈な強気発言である。しかし、実際には株式市場はその直後に急降下することになる。

しかしダリオ氏はそれでも強気発言を撤回しなかった。市場の下落が始まってすぐに声明を発表し、株安は一時的なものだと主張した。

それでもこうした大きな急落は、より長期的な観点で見れば取るに足らない調整に過ぎない。株価上昇が一旦停止すれば買いを入れようとする資金が大量に存在している。次に何が起こるかということが一番重要なのだ。

その通り、市場で一番重要なのは次に何が起こるかということである。

発言とは裏腹の欧州株空売り

したがって、ダリオ氏が次に起こるのは株高だと予想しているならば、株を買っているはずなのだが、Bloombergがそれとは正反対のニュースを伝えている。欧州株の空売りである。

Bloombergによれば、ダリオ氏の運営するBridgewaterは8日の時点で欧州株を131億ドル(約1兆4,000億ドル)空売りしているという。因みに1日時点では31億ドルだったと報じられているから、2月2日に株安が始まってから慌てて空売りポジションを増やしたことになる。

因みに、Bridgewaterは恐らく空売りだけを行っているわけではない。現時点で最新のデータ(昨年9月時点)では、Bridgewaterは新興国株ETFを買い持ちしていた。

その後どうなったかはまだわからないが、つまりBridgewaterは株式の買い持ちと売り持ちを両方持っていることになる。そもそも、こうしたポジション開示はポートフォリオの一部であるため、全体を把握することは出来ない。

しかしながら、株式に本当に強気であれば、株安が始まってから慌てて空売りを増やすようなことはしないだろうと筆者は推測する。むしろ、トランプ相場初期にトランプ氏が政治的に嫌いだという理由で米国株は暴落すると宣言し、実際に空売りして踏み上げられたジョージ・ソロス氏の方がむしろ潔いではないか。

また、まだ分からないが、現状では債券投資家ガントラック氏の予想通りに状況が進んでいると言えるだろう。

ダリオ氏もガントラック氏とも優れた投資家だが、筆者は個人的にはダリオ氏の方を評価している。しかし今回の予想に限ってはどうだろうか。もう一度ダリオ氏の株高予想の根拠を読み直して、読者も考えてみてもらいたい。

また、あと数日でbridgewaterの米国株ポジションの開示もあるので、ダリオ氏が一体何を買っているのかを報じることができる。そちらも楽しみにしてもらいたい。