ベルリンで難民がトラックで群衆を轢き殺してもドイツ人が移民政策を支持する理由

12月19日、ドイツの首都ベルリンでパキスタン人難民申請者がトラックに乗りクリスマス市場の群衆に突撃、12名が死亡、48人程度が重症を含め負傷した。Telegraph(原文英語)などが伝えている。

容疑者は2016年2月にドイツに難民として来た23歳のパキスタン人の男性という。ドイツ警察は事件を受けて難民施設を捜索した。

ヨーロッパ移民問題

2015年後半より、ヨーロッパでは移民によるあまりに多くの大量殺人や性的暴行事件が発生している。過激派はどうやらトラックを武器として認識し始めたようであり、今回の事件は2016年7月にニースで起きた花火大会での大量殺人を彷彿とさせる。

犯人とトラックだけあれば大量殺人が成立してしまうのであれば、ヨーロッパに住んでいる人間はどうすれば良いというのだろう?

しかし驚くべきは、メルケル首相の主導した移民政策のこうした結果にもかかわらず、ドイツ人の多くはいまだメルケル首相を支持しているということである。12月の世論調査によれば、59%がメルケル氏の2017年総選挙への出馬を好意的に捉えたという。

日本人にはこうしたドイツ人の感情は理解出来ないものだろう。もし、ドイツ人は非常に心優しいので自国民が多く殺されたとしても難民を受け入れ続けるのだ、と言う人が居るとすれば、恐らくその人はドイツ人と一度も喋ったことがないのだろう。

ドイツ人は何故移民政策に執着するのか?

何故ドイツ人は移民政策を強行したがるのか? それは第2次世界大戦が彼らにとってトラウマとなっているからである。

より正確に言えば、第2次世界大戦によって周辺国からその国民性を非難され続けたことがトラウマとなっているからである。ドイツ人は生まれた頃からドイツ人であることを誇ることが出来ずに成長する。ドイツの偉大さについて話そうものなら、「しかしドイツ人は第2次世界大戦で虐殺を行ったではないか」と返ってくるわけである。

ではドイツ人はどうしたか? 彼らは過去と自分たちを分離しようと試みた。「昔のドイツ人は民族主義的だったかもしれないが、今の自分たちは違う。むしろ自分たちは他民族主義を受け入れる、ナチスドイツとは真逆の人種である、だから昔のドイツへの非難は自分たちとは関係のないことだ」、それがヨーロッパから国境を取り払い、あわよくばヨーロッパと中東の垣根まで無くしてしまおうとしたドイツ人の心の叫びである。日本人には信じがたいことだが、ドイツ人にとってはこうしたことが大問題なのである。

ドイツ人の贖罪意識

しかし明確にしなければならないのは、彼らはナチスドイツによる虐殺を後悔しているわけではなく、戦争の結果ヨーロッパ中から後ろ指をさされ、ドイツ人の評判が貶められ、自分たちが卑屈に生きなければならなかったことがトラウマになっているだけなのである。

だから彼らの拒否反応は周囲の身の安全や文化的摩擦を無視した過激なものとなり、その結果ドイツ人が何人死のうとも、フランス人が何人死のうとも、ヨーロッパ中で女性が強姦されようとも、彼らにとってはより重要な使命があるわけである。

ヨーロッパの諸国を訪れれば分かるが、ドイツに対する周辺諸国の不満は相当なものである。しかしそれでもドイツ人は意見を変えようとはしない。統一ヨーロッパとしてのEUはドイツ人に贖罪の機会を与えたばかりか、ナチスドイツを支持したドイツ人にとって悲願であった、ヨーロッパを支配する民族としての地位と、そして共通通貨ユーロを通じて南欧諸国から資産を移転させることも出来るのだから、そのような美味しい立場をドイツ人が手放そうとするはずがない。

このように書けば大袈裟に聞こえるが、これは大袈裟でも何でもない。ドイツ人と話していれば分かることである。彼らは本当に、ヨーロッパの諸国民を見返して「やはりドイツは偉大なのだ」と信じられる日々を願っている。贖罪と言いながら、それはナチスドイツによる虐殺を支持したドイツ人の国民感情と全く同じものなのだが、彼らはそれに気付いていないのである。

結論

しかしこうしたドイツの目論見にヨーロッパ諸国は反旗を翻しつつある。

初めに異議を唱えたのはイギリス人である。現イギリス外相であるジョンソン氏が、EU離脱の国民投票について「これはわれわれイギリス人にとって、節度と常識の声としてヨーロッパの救世主となり、目の前で繰り広げられる無秩序を止めるためのチャンスなのだ」と述べていたことを思い出したい。

そしてイタリア人は、実質的にドイツの支配する植民地制度であるところの共通通貨ユーロに対して異を唱え始めている。彼らはギリシャとは違い、比較的安全にユーロを抜けられる立場にある。

ヨーロッパの今後はどうなるだろうか? 2017年には各国の総選挙が待っている。ヨーロッパの動向については今後も伝えてゆく。