レイ・ダリオ氏、インフレ率の低下を予想せず

引き続き、世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)におけるインタビューを紹介する。今回はアメリカの金利とインフレ率について語っている部分を取り上げる。

金利低下は続くのか

株式市場を含む金融市場全体を支配しているのは金利である。金利が下がると株価が上がり、金利が上がると株価が下落する。

その金利は去年の高値から多少下がってきた。アメリカの長期金利のチャートは次のようになっている。

これは去年終盤からの株高の原因である。

では金利はこれからも下がり続けるのか。金利はインフレ率と、インフレ率を差し引いた実質金利によって構成される。(名目)金利とはその2つの和である。だからダリオ氏は金利の水準について次のように言っている。

債券の金利の話から始めよう。まずはインフレ率を考え、それに実質金利を足す。

まずインフレ率は3%から3.5%程度で推移する可能性が高い。そしてそれに実質金利を足す。実質金利は1%と2%の間だ。

ダリオ氏の計算はこのようになっている。これらを足し合わせると金利の水準が得られるので、ダリオ氏は金利が4%から5.5%程度の水準で推移すると考えているようだ。

この水準を念頭に置いた上で、ダリオ氏は4%近辺まで下がってきた長期金利について次のように語っている。

だから金利が4%であるならば、それはもはや魅力的な金利水準ではない。

ダリオ氏の見方では、金利がそれ以上下がった場合には下がりすぎということらしい。

インフレ率の推移予想

ダリオ氏がアメリカの金利はそれほど下がらないと考えているのは去年からのことである。だが、注目したいのはインフレ率が3%近くまで落ちてきた今でもダリオ氏が3%から3.5%というインフレ率予想を維持していることである。

アメリカのインフレ率は以下のように推移している。

インフレ率は3%まで落ちてきたところで足踏みしている。インフレ率がここから更に下がってゆくのかということが議論の的になっているが、ダリオ氏が予想する数字から考えると、ダリオ氏はインフレ率もまたこの水準が妥当であり、ここから継続的に下がってゆくことはないと考えていることになる。

筆者や経済学者のラリー・サマーズ氏は比較的ダリオ氏に近い予想をしている。

一方で、債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏は長期金利が上昇に転じる前に3.3%程度まで下がると予想している。

金利の動向は株価に大きな影響を与える。ダリオ氏のシナリオなら、米国株には不利だろう。一方でガンドラック氏も株価に不利な予想をしているから興味深い。

筆者の予想は年始に書いておいたので、そちらを参考にしてもらいたい。