サマーズ氏: 米国経済リスクは景気後退よりもインフレ再加速

アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏が、Bloombergのインタビューで2024年のアメリカ経済の見通しについて語っている。

インフレ率下落と景気後退

インフレ抑制のために金利は上がった。高金利のお陰でインフレ率は下がったが、ここ数ヶ月下落スピードは落ちている。

利上げはインフレ冷却に効いたわけだが、インフレ減速で長期金利も直近の天井からは落ちてきたこともあり、投資家にとって問題は現在の金利水準が引き締め的なのか緩和的なのかということである。

インフレ率に関してもこのまま下落してゆくという見方と、そう簡単には下がらないという見方がある。インフレ率が下落してゆくという見方は、当然ながら実体経済の落ち込みを前提としているので、景気後退予想とセットになることが多い。

サマーズ氏の2024年米国経済見通し

現役最高のマクロ経済学であるサマーズ氏はどう考えているだろうか? 彼は次のように述べている。

景気後退をメインのリスクだと考える見方にはいささか驚かされている。直近2ヶ月の金融市場の変化が理由だ。

株式市場は再上昇した。住宅価格は年率6%か7%で上昇している。長期金利と住宅ローン金利は大きく下がった。金融状況は既に大きく緩和的になったと思う。だからインフレ見通しには気をつけた方が良いだろう。

サマーズ氏はアメリカ経済の減速リスクよりも過熱リスクの方を警戒しているようだ。短期的な動向について言えば、筆者もどちらかと言えばそちらに傾いている。

一番の理由はやはり長期金利の低下である。アメリカの長期金利は次のように推移している。

天井から1%下がっている。それでも低くはない水準だとは思うのだが、問題は株式市場が上がっていることである。S&P 500のチャートは次のようになっている。

金利低下で株高というのは、まだ経済に余裕がある時の金融市場の動きである。余裕がなくなればどうなるかと言うと、2018年の利上げによる世界同時株安の時のように金利が上がったまま株価が下がることになる。今の動きと逆である。

2018年のS&P 500と長期金利のチャートを並べると次のようになる。

株価の下落が始まっても2ヶ月近く長期金利が高値水準にあるのが分かるだろう。

結論

一方で債券の専門家であるジェフリー・ガンドラック氏はインフレ率はこのまま下がってゆくと予想している。

だが筆者は上記の理由から、短期的にはサマーズ氏の見方に近い相場観を持っている。

しかし長期見通しはそれほど変わらないだろう。金利がもし低すぎるならば、長期金利はもう一度上昇して株価を下げることになる。その頃にアメリカ経済がもっと弱まっていれば、長期金利上昇の影響は2023年よりも大きくなるだろう。

また、長期金利がもし再上昇するとすれば、既に歴史歴水準まで上がっている米国株は去年末の金利低下がなければ上がらなかっただろうから、そのある程度の巻き戻しもあるだろう。株価については以下の記事で既に書いたので、そちらを参考にしてもらいたい。