ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領選挙に勝利した理由

2016年のアメリカ大統領選挙でのドナルド・トランプ氏の当選が決まった。恐らくは日本のメディアの偏向報道によりヒラリー・クリントン氏優勢の報道ばかり耳にしていた日本の人々には驚きをもって迎えられる結果かもしれないが、投票日以前にもトランプ氏優勢の世論調査は少なくなかったことはここで伝えてきている通りである。ヒラリー・クリントン氏を支持するメディアが報じていなかっただけである。

しかしトランプ氏がこれほどの支持を集めた理由についてはここでも断片的にしか説明していなかった。そこで、この記事ではドナルド・トランプ氏が有権者に選ばれた理由について包括的に説明してゆきたい。

民主党の候補者選び

先ず第一に言えるのは、トランプ氏が勝利したのは、対立候補となった民主党の候補者がヒラリー・クリントン氏だったからである。

そもそもヒラリー・クリントン氏は政治家とメディアと大企業の支持によって民主党の大統領選候補となった政治家である。民主党支持の有権者の多くは貧困層に味方するバーニー・サンダース氏を選んでいた。しかしサンダース氏は有権者における人気にもかかわらず、民主党候補を選ぶ予備選でクリントン氏に敗退した。これは民主党の候補者選定システムのためである。

サンダース氏は一般の民主党支持者の支持率においてはヒラリー・クリントン氏を大きく引き離したが、民主党の政治家の票を獲得出来ず、その結果有権者における不人気にもかかわらずクリントン氏が民主党の候補として選ばれることとなった。一方でトランプ氏が出馬した共和党では純粋に一般有権者の支持によって候補者が決まる。民主党は元々が政治家と癒着した大企業を利するシステムなのである。

こうした結果は民主党支持者に大きな禍根を残した。そして政治家や大企業によって歪曲された民主党の党内政治を印象付ける結果となった。トランプ氏が選挙戦を通して非難していたのはそういう腐敗した政治システムそのものだったのだから、サンダース氏の支持者の一部がトランプ氏に流れたのは想像に難くない。

クリントン氏の薄い人望

原因はヒラリー・クリントン氏自身にもある。クリントン氏が権力以外の何にも興味がないことはアメリカ国民なら誰もが知っている。

例えば、クリントン氏は大企業の利益となるTPPに賛成していた。TPPは未だに内容が明らかになっていないが、食品などに使われる農薬などに対する規制緩和が含まれていると推測され、一般市民の健康を犠牲にして大企業を利する条約として悪名高いが、ヒラリー・クリントン氏にはそのようなことは関係がなかった。

しかしトランプ氏やサンダース氏などがTPPに反対してアメリカ国民の支持を得ると、途端にクリントン氏はTPP反対に回った。彼女に政策など存在しなかった。存在するのは大統領になれるかどうかという打算と、どのような政策を打ち出せば企業が政治献金をしてくれるかということだけである。

一方でトランプ氏は政治献金をほとんど受け付けず、主に自腹による選挙活動を行った。選挙資金ではクリントン氏に大いに見劣りし、広告合戦では不利な面もあったが、それがトランプ氏の反政治腐敗のイメージを植え付ける結果となった。トランプ氏の選挙戦は主にTwitterとFacebook、そして各地での集会によって行われた。

日本ではトランプ氏こそが大統領になりたいだけだとか、売名行為だとかいう非常に浅い理解による馬鹿げた評が一部見受けられたが、そのような子供じみた理由で私財の多くを投げ打ち、暗殺されるリスクを顧みずに大統領選挙に出馬する人間はいない。常識的に考えれば分かるだろう。それが良いものであれ悪いものであれ、トランプ氏には目的があったのである。クリントン氏にはそれが無かった。

マスコミのヒラリー贔屓

そのような「何もない」ヒラリー・クリントン氏を無理矢理持ち上げようとしたのがメディアである。例えばこれまでの世論調査では、クリントン氏優勢となっているものが恣意的に選ばれて報道されていた。トランプ氏優勢のものが一度だけ報道されたとき、それに驚いていた日本人の反応に苦言を呈したのは少し前のことである。

マスコミはこぞってヒラリー・クリントン氏を常識的な選択とし、トランプ氏の支持者は頭の悪いレイシストだとして扱った。ヒラリー・クリントン氏も自らそういう発言をした。非常に残念ながら日本でのイメージも大多数の人にとってはそういうものだろう。

しかしそれはアメリカ国民の思いとは完全に乖離している。ヒラリー・クリントン氏に反対するアメリカの有権者には断固たる理由があった。そしてマスコミに心無い非難をされ、馬鹿に馬鹿と言われたトランプ氏の支持者たちは、自分たちの票で大統領選挙を覆そうと強く決心した。そして元々はクリントン氏の支持者であっても、このようなメディアの偏向報道を見て何かがおかしいと思った有権者もあったことだろう。

高まる反グローバリズムの気運

そして最後に挙げられるのはやはり反グローバリズムである。上に書いたTPPなどは格好の標的となった。大企業は国民を農薬漬けにすることで金を儲けようとしている。反移民もトランプ氏の大きな支持基盤の一つである。大企業は安い労働力が欲しいためだけに移民政策を推進する政治家を支持し、メディアはそれを援護射撃するために可哀想な移民の子供の写真を載せるのである。

一部の指摘によればそうした写真の一部はでっち上げられたものだと言う。しかし自分の頭で考えない一部の有権者にはそのようなことは関係がない。その結果、現地の女性が性的暴行を受け、多くの人々がテロで殺されたとしても政治家や大企業、メディアの知ったことではないということである。ヨーロッパでは大惨事となっている。

このような馬鹿げた事態にもかかわらず、メディアによればグローバリズムは常識的、理性的選択であり、彼らはそれに反する政治的主張は反理性主義であるとまで言い放った。しかし彼らの選択によって現地住民はおろか騙された移民でさえも不幸な目にあっている。文化も言語も異なる国にいきなり移り住んで生計を立てることが簡単であるはずがない。繰り返すが、彼らの多くは難民ではなく、自国でも十分暮らせたであろう出稼ぎの移民なのである。

ヒラリー・クリントン氏の支持者はトランプ氏を嘘つきだと繰り返し主張したが、嘘に塗れていたのはクリントン氏の裏で団結したグローバリズムという利権である。このような偽善に反旗を翻さないまともな人間があるだろうか? イギリス人は少なくともそれを知っていたのである。

ヨーロッパでは既に惨劇が起きたが、アメリカはそれを未然に防いだ形となる。アメリカの有権者の方が日本人よりもよほどまともである。

今や先進国でグローバリズムを喜々として推進している国は日本だけとなった。TPPも移民政策も日本だけが乗り気である。

グローバリズムの闇についてはここでは語り尽くせないほどのことがある。興味のある読者は他の記事も読んでみてもらいたい。大富豪のジョージ・ソロス氏も、OECDも、日本で言えば財務省も、すべては同じ穴の狢なのである。彼らの終わりの日が来たということである。日本人も立ち上がるべきではないか。