トランプ政権の法人減税が暗礁に乗り上げて米国株急落の可能性

トランプ相場で米国株が上昇を続けている。トランプ大統領が米国議会との調整に手間取っていることから、トランプ政権の政策による経済成長とインフレを期待して上昇していた長期金利は下落しているにもかかわらず、米国株だけは市場最高値を更新し続けている。

その理由はトランプ大統領の主張する法人減税である。トランプ大統領はアメリカの法人税を35%から15%まで引き下げることを公約にしている。

法人減税はそのまま企業利益の改善に繋がる。これが、トランプ大統領の公約のうち与党共和党的ではないインフラ投資などの政策の成立が危ぶまれ、金利高が停滞している状況でも、株価だけは下落していない理由である。

15%への減税を渋る共和党

しかし、法人減税を提案するのはトランプ大統領だが、それを議会に通すのは与党共和党である。そして、最近のニュースによれば、共和党の重鎮たちは15%への引き下げを現実的ではないと考えているようである。

例えば、Fox Business(原文英語)によれば、共和党の重要人物ポール・ライアン下院議長は財政赤字拡大を懸念し、複数の下院議員に法人減税の目標は20%から25%が妥当だと話しているようである。

また、Reuters(原文英語)によれば、上院財政委員長のオリン・ハッチ氏は、トランプ大統領の提案を歓迎しながらも、15%の実現の困難さを語っている。

現実的に言えば、法人税が25%以下になるとすれば、それはいわば奇跡的だろう。もし15%のようなことが可能なのであれば、15%にまで引き下げたい。しかし実際のところは、もし少しでも引き下げられれば幸運だと言わざるを得ない。

また、ハッチ氏は法人減税の実現には野党民主党の協力が必要になるかもしれないと語っているが、筆者はそちらの方が難しいのではないかと思う。しかし共和党だけで折り合いが付かないのであれば、民主党との妥協という第二の選択肢によって税制改革が中途半端なものになる可能性はある。いずれにしても、相場にはリスクとなる。

米国株への影響

法人減税に関する議論は今年中に決着すると想定されているが、米国株がここまでほとんど法人減税だけを頼りに上昇して来ている以上、法人減税が少しでも暗礁に乗り上げることがあれば、米国株に一時的なショックがあることも当然考えられる。

そして現実に法人減税はそれほど簡単には議会を通らない可能性が低くないようである。恐らくはそこまで想定してのことだと思うが、これまでトランプ相場に関する相場予想にを的中させ続けているガントラック氏は、最近米国株の下落に賭け始めた。

彼がボラティリティ上昇に賭けるオプションの買いという選択肢で米国株下落に賭けていることは恐らく正しいのだろう。法人減税が15%になるのか、20%になるのか、25%になるのかという不確実性だけで、株価の適正水準は大きくブレるからである。

個人的には、ファンダメンタルズで見れば米国株がそれほど高い水準にあるとは思っていない。しかし、最近の市場に見られる過度な楽観を危険視していることは、これまで書いている通りである。量的緩和の逆回しであるマネタリーベース縮小という金融引き締めを前にして、投資家はあまりに楽観し過ぎているのである。

しかし、もし下落が始まったとしても、量的緩和バブルの完全な崩壊にはならないだろうというのが、筆者の現在の相場観である。これについては以下の記事で説明してあるので、未読の読者には読んでもらいたい。