ジョージ・ソロス氏、支配階級の集まるダボスでトランプ大統領を独裁と批判

2017年の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)については主にBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏の世界経済見通しについて報じている。

一方で、あまり引用する気にならなかったのだが、一応公平を期するためにジョージ・ソロス氏のコメントについても報じておこう。

「開かれた社会」の危機

毎年ダボス会議に出席しているソロス氏は今年も出席し、Bloombergによるインタビュー(原文英語)を受けた。ソロス氏は反トランプで有名であり、アメリカ大統領選挙では対立候補のヒラリー・クリントン氏を支持していた。

2016年は彼にとって災難な年となった。彼が彼の嫌いなロシアに対抗する勢力として支持したEUは、イギリスのEU離脱によってその意義を人々に否定された。

これはソロス氏の支持する移民政策が一因であった。そしてアメリカではトランプ大統領が勝利した。

政治活動家でもあるソロス氏は「開かれた社会」を世界中で実現するためにその莫大な資金を使っている。その信念はグローバリズムである。しかしそうした考えに否定的な潮流が広まりつつあることを受けて、何故人々は「開かれた社会」に異を唱えつつあるのかと聞かれたソロス氏は、以下のように答えた。

何故ならば、「開かれた社会」は別の社会モデルによる脅威に晒されているからだ。一般に、政府には二つのモデルが存在する。一つのモデルにおいてはリーダーが民主的なプロセスによって選ばれ、選ばれたリーダーはそれを選んだ人々の利益になるよう行動するとされている。

「されている」と言ったのは、当然そこには欺瞞があるからだ。しかし、それでも支配者が自分の利益のために民衆を操作するもう一つのモデルよりはよほど好ましい。残念ながら、現在そのもう一つのモデルが台頭してきている。

ソロス氏がその例として挙げるのはトランプ大統領である。

わたしは彼を独裁者気取りの偽物の詐欺師だと表現した。だが彼は「独裁者気取り」でしかない。アメリカの社会に根付いた価値観は力強く、彼は独裁者にはなれないだろう。彼が行き過ぎる時、議会は自分の権利を守るために行動し、彼の行き過ぎに対して反抗するだろう。

要するに、彼はトランプ大統領が独裁的で、その結果民主的な「開かれた社会」が攻撃されているのだと言っているのである。

ソロス氏の批判

先ず第一の疑問は、アメリカ大統領選挙で対立候補であったヒラリー・クリントン氏が、ソロス氏自身を含む富豪や企業からの政治資金を集められるだけ集め、そうした利権に賛同する大手メディアの一方的な支持を受けていながら、それに対抗してほとんど自前の資金で選挙を行い勝利したトランプ氏の当選が民主的ではないとする主張が、どのように正当化されるのかということである。

ちなみにソロス氏はそのトランプ氏の勝利の後、自分の主宰する非営利団体を使って反トランプデモを扇動し、しかもその一部は単なる暴動に発展している。

この件についてはソロス氏の基金であるオープンソサエティ財団も「われわれは多くの団体を支援しており、そのなかにはそういう団体もあったかもしれない」と否定していない。これが「支配者が自分の利益のために民衆を操作する」以外の何であると言うのだろうか? 彼は自身の矛盾に気付いていないのか?

また、ソロス氏の信じるアメリカの「価値観」とは、反グローバリズムの勢いに対抗するためにインターネット規制を行おうとしているドイツのメルケル首相が「われわれが慣れ親しんだ秩序」と呼んだものである。

その秩序とは、要するに既得権益層がメディアや公共教育を通して民衆を管理出来るシステムである。

そうした既得権益層の欺瞞に対する人々の反発こそがトランプ大統領やBrexitを産んだというのに、ソロス氏のような人間はそれに気付くことはない。彼の発言は、何か気まずそうにしながらもその根本原因を理解することのないダボス会議のエリート達の心理を体現していた。

また、ソロス氏はトランプ大統領がアメリカ社会をより分断させると主張していた。

彼はアメリカの社会をより分断するだろう。彼は自分を人々の意思を体現する人間だと考えている。だから彼に反対する人々は、彼の言う「人々」のなかには含まれないのだ。

アメリカ大統領選挙を自分の目で追ってきた読者ならば、このコメントを聞いて思い出すことがあるだろう。これはまさに、ソロス氏が支持し、莫大な資金をつぎ込んだ対立候補のヒラリー・クリントン氏が選挙中に非難を受けたことである。クリントン氏は選挙中の演説(原文英語)のなかでこう述べた。

一般的に言って、トランプ支持者の半分は屑の集まりだと呼べる人々だろう。人種差別主義者、性差別主義者、同性愛嫌悪、外国人嫌悪、イスラム嫌悪など何とでも呼べる。

クリントン氏はこの発言で実質的にアメリカ国民の四分の一を屑だと呼んだ。何度でも言うが、国境を持つことは人種差別ではない。トランプ氏の支持者の大半は単にグローバリストの押し付けた移民政策に異を唱え、「普通の国境」を求めた人々である。彼らはヨーロッパの移民政策の惨状を知っている人々である。

移民政策は安い労働力を望むグローバル企業が自分勝手な理由で押し付けようとした現代の奴隷制度であり、それは現地国民はおろか移民さえも不幸にする制度である。

人々はそれに気付きつつあるというだけのことである。しかしソロス氏の支持したクリントン氏は、そうした人々を上記のように切り捨てた。それに対してトランプ氏はTwitter(原文英語)でこう答えた。

ヒラリーがわたしの支持者に酷いことを言っている。彼女の支持者の多くは絶対にわたしに投票したりはしないだろうが、それでもわたしは彼ら全員を尊重する。

さて、ソロス氏は、誰の言う「人々」のなかに、どういう人々が含まれていないと言ったのだったか?

わたしは個人的には投資家としてのソロス氏を非常に尊敬している。だから彼のこういうコメントは読んでいて悲しくなる。もう少し彼が自分を客観的に見ることが出来れば、もう少し聞き手の共感を得る発言をすることが出来ただろう。彼の政治的発言についてはそうコメントするだけとしたい。