トランプ大統領、ダウ平均2万ドル到達を「とても誇りに思う」

1月25日、米国の株価指数であるダウ平均株価が史上初めて2万ドル台に到達した。通常、機関投資家が見るのはS&P 500の方で、ダウ平均はあまり気にしないが、一応節目ということでチャートを貼っておこう。

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トランプ大統領の反応

これを受けて喜んだのがトランプ大統領である。米国株はアメリカ大統領選挙以来、トランプ大統領の減税や公共事業、規制緩和などの政策を好感して上昇し続けてきた。これを自分の成果と解釈したトランプ大統領は、CNBC(原文英語)の伝えるところによると、2万ドルに達したダウ平均について以下のようにコメントした。

史上初めてのことで、非常に誇りに思う。ここからは上へ、上へ、上へ行かなければならない。

ちなみにトランプ大統領は、アメリカ大統領選挙の頃に、米国株は「大きく醜いバブル」であり、中央銀行が利上げを行えば長らく続いた低金利バブルは崩壊すると主張していた。

この主張は著名なヘッジファンドマネージャーらの当時の相場観と一致していた。しかしトランプ氏が当選した後、実際に長期金利は大幅に上昇し、それに引きずられて中央銀行は利上げを行なった。

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しかし、金利上昇にもかかわらず、米国株は史上最高値を更新したということである。

長期金利と米国株

この状況について少し説明をしておきたい。先ず、上に載せた長期金利のチャートは、去年以下の記事でわたしが危険水域と呼んだ2.7%-3.0%のレンジを慎重に避けるような形で推移している。

先ず、株価そのものについては長期金利がこの危険水域に突入しない限り、少なくとも大幅に下落することはないだろう。長期金利が2.5%以下に収まり、しかもトランプ政権の政策に期待が集まる環境は株価にとって「ゴルディロックス」(過不足なく快適な状態)であると言える。長期金利が上がらない限り株価が大幅に下落しない理由は、以下の記事を読んだ読者ならば分かるだろう。

しかしながら、政策が評価され成長とインフレが期待されるほど長期金利は上昇するため、この「ゴルディロックス」はかなり綱渡りの状況ではある。

一方で、もし株価水準自体が大幅に下落しないとしても、実体経済の方は長期金利の上昇に確実に圧迫されるだろう。それは程度の問題であり、2.7%を超えるか超えないかという問題ではない。上昇した分だけ悪影響が出る。それはレーガノミクス開始直後の株価下落を知っている投資家ならば既知のことである。

結論

トランプ大統領は株高を歓迎したものの、金利についてはいまだ明確なコメントを出していない。明確な問題が表出しない限り、低金利という奥の手を使いたくないということかもしれない。

しかし、トランプ大統領が金利低下を促す発言をしない場合、2017年前半のアメリカGDPは長期金利上昇の悪影響をまともに受けることになる。経済政策はすぐに効果を発揮するわけではないからである。

そうなった場合、今後の経済指標を受けて「トランプ政権で高成長、高インフレ」という相場のテーマが一度崩れる可能性がある。その場合、長期金利は低下、米国株は低成長と金利低下という反対方向の二つの圧力のなかで水準を探ってゆくことになる。ちなみにこれは、ドル円や日経平均にとって居心地の悪い環境となるだろう。

結局のところ、米国株の水準については、Bridgewater創業者レイ・ダリオ氏の「程々に魅力的だ、しかし非常に魅力的であるわけではない」という言葉が恐らくは正しいのだろう。

しかし個人的には米国株には手を出さないだろう。恐らくダリオ氏もそうなのではないか。それでも世界の株価のベンチマークである米国株については今後も報じてゆく。