レイ・ダリオ氏: 米国は利下げすべきではない

世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が自社のインタビューでアメリカの利下げと金利水準について語っている。

アメリカの利下げ期待

もう昔のことのようだが、アメリカの金融市場はほんの少し前まで今年6回の利下げを織り込んでいた。筆者や一部の著名投資家たちはその利下げ期待が過度な楽観だと指摘し続けてきた。

筆者は2月の時点で次のように書いている。

筆者はもしかすれば利上げの可能性もあるのではないかと疑っている。

そして利下げどころか利上げがある確率は最近になって上がってきたように見える。

利下げはあるのか

市場の利下げ期待はそれからかなり修正されたが、市場の利下げ期待についてダリオ氏は次のように述べている。

少し債券市場と債券市場が織り込んでいる金融緩和について話してみよう。

多くの人はアメリカは緩和すべきだと考えているが、それは間違っている。

その理由はインフレがまだ収まっていないからである。アメリカのインフレ率は3%台で推移しており、以下の記事における筆者の分析では2%台に下落しそうな気配はまったくない。

だからダリオ氏は次のように続ける。

現在のインフレの水準を考えれば、それは間違いなく目標に達していない。にもかかわらずFed(連邦準備制度)は緩和しようとしている。

彼らは2.5%や3%のインフレを許容範囲内だと判断するのかもしれないが、現状の実体経済や金融市場やクレジットスプレッドなどの金融状況を見てみれば、今の状況は間違いなく緩和的過ぎる。

住宅価格も株価も上がっている状況で、更に利下げをすればインフレがどうやって下がると言うのだろうか。

もちろんインフレの予測はそんな単純なものではないのだが、以下の記事で説明している通り金利に一番敏感な住宅市場でさえ過熱している状況で、高金利が効きにくい労働市場などにおけるインフレが収まるはずがないというのは1つの重要な見方である。

結論

だからダリオ氏は次のように言う。

金利が織り込む経済成長とインフレを考えて、今の金融政策で何が悪いんだ? その経済成長とインフレは金融政策で景気刺激しなければならないほど低すぎるのか?

また、現在の金利水準については次のように述べている。

債券市場は4.5%程度で適切になっていると思う。長期金利は恐らく低すぎる。

現状、2年物国債の金利は4.9%、10年物国債の金利は4.5%である。

もう一度強調しておかなければならない事実は、去年終盤からの米国株高が利下げをあてにして長らく続いてきたものだという事実である。

これまでの株高の根拠を失った株式市場はこれからどうなるのか。足場を失った株式市場がしばらくの間は宙に浮くという曲芸はしばしば見られるものだが、今回も見られるのだろうか。楽しみに待ちたい。