ガンドラック氏: 今年前半に米国利下げはない

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がCNBCのインタビューで先日発表されたCPI(消費者物価指数)統計にコメントしている。

1月米国CPI

発表された1月のCPI統計では、住宅やサービスのインフレが加速していることが示された。

ガンドラック氏は今回のインフレ統計について次のように語っている。

Fed(連邦準備制度)にとってこのデータは残念だっただろう。インフレ率の緩やかな低下が続くことに対する期待は大きかった。だが今回のデータはそれを裏切った。

元々Fedは今年3回の利下げを表明しており、それ以上の利下げを期待していた金融市場は今年6回の利下げを織り込んでいた。

それで米国株は上昇してきたのだが、ガンドラック氏は筆者や他の著名投資家同様、それが市場の希望的観測だと言い続けてきた。

それが今回のインフレ統計で示されたことになる。

市場の利下げ期待

ガンドラック氏は市場の利下げ期待について次のように述べている。

市場は今年の利下げ回数を大幅に過剰に見積もっていた。

パウエル議長はFedが3月には動かないと言っていたから、それは5月に開始するということを意味する。

元々それが意図されていたわけではないのだろうが、5月から年末までの間に6回もの利下げがあることになる。そのためにはインフレの状況が非常に大きく改善しなければならないが、それは今のところ起こっていない。

だから金融市場はその見通しの修正を迫られている。ガンドラック氏は次のように続ける。

2年物国債の金利は、今後2年の間に平均で1%の利下げがあることを示唆している。つまり今年はおよそ0.5%だということだ。

ちなみに金利先物市場を見ると、やや違ったデータが得られる。金利先物市場は元々6回の利下げを織り込んでいたが、今では4回(つまり1%分)の利下げを織り込んでいる。

だがいずれにせよ利下げ織り込みは縮小している。筆者や他の投資家の予想通り利下げ期待は修正されつつある。

インフレ率はどうなるか

重要なのは今後のインフレ率の推移だろう。この点に関してガンドラック氏の予想はやや孤立していた。

筆者やレイ・ダリオ氏などがインフレ率がなかなか下がらないのではないかと主張してきた一方で、ガンドラック氏はインフレ率の継続的低下を予想していた。

その根拠がCPI以外の住宅市場の統計だった。ガンドラック氏は次のように述べている。

(CPIの)建物のインフレのデータは奇妙だった。

前年同月比で6%の上昇となったが、家賃も住宅価格もはそれほどの上昇率とはなっていない。

マンションの家賃やZillowの指数などは大幅な減速となっている。にもかかわらず、CPIの建物の要素はこうした指数から当然予想されるトレンドから外れている。

だが筆者は住宅関連の統計がそれほどデフレ的だとは思わない。インフレ率はガンドラック氏の予想からずれ始めているのだろうか。

結論

いずれにせよ市場は利下げの織り込みを縮小している。アメリカの利下げはどうなるのか。ガンドラック氏は次のように述べている。

5月に利下げが始まる可能性は低そうだ。これからもし十分なデータが集まれば有り得なくはないが、利下げがあるとすれば恐らく6月ではないか。

ガンドラック氏が「あるとすれば」と言っていることに注目したい。驚くべきことではないか。利下げがない可能性があるということである。

筆者はもしかすれば利上げの可能性もあるのではないかと疑っている。そうなれば利下げを期待して上昇してきた株式市場のトレンドは大幅に反転することになる。

一方でアメリカの銀行セクターは高金利で悲鳴を上げ続けている。利上げが必要になれば完全にスタグフレーションである。

興味深い相場になってきたのではないか。