ガンドラック氏: アメリカのインフレ率は2.5%まで更に下落する

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が自社ウェブキャストでアメリカのインフレ率の動向を予想しているので紹介したい。インフレ率はどうなるだろうか。

アメリカのインフレ動向

アメリカのインフレ率はFed(連邦準備制度)が2022年から始めた利上げのお陰でかなり下がってきた。ガンドラック氏はインフレ率について次のように述べている。

Fedの利上げ開始がかなり遅れたので、インフレ率は9.1%まで上がり、それから3.1%まで下がった。

最新のインフレ統計については以下の記事で報じているが、前年同月比で見たインフレ率のグラフは次のようになっている。

インフレ率と金利の見通し

このインフレ率がどうなるかということが議論の的になっている。株式市場ではインフレ低下による利下げ期待が織り込まれており、それが株高の要因となっているからである。

前回の記事でレイ・ダリオ氏はそれに異を唱え、インフレ率はそれほど下がらず市場が予想するほどの利下げはないと主張していた。

3%付近で停滞しているインフレ率はどうなるか? ガンドラック氏は次のように予想している。

インフレ率はこれから3ヶ月ほどは恐らくこの水準に留まるだろうが、アメリカの景気後退を予想しているわれわれの見方では、インフレ率はFedの目標としている水準までそこから更に下がるだろう。2.5%か、もしかしたらそれよりも低くなるかもしれない。

インフレ率下落予想の理由

ダリオ氏がインフレ率の底打ちを予想している一方で、ガンドラック氏は更なる下落を予想している。

ガンドラック氏の予想の根拠は何か? 彼は次のように続けている。

今のところ全体のインフレ率は6%下落したあと3%台前半で停滞し横ばいで推移している。

だが食品とエネルギーを除くコアインフレ率は急激に上下しないように設計されているので、全体のインフレ率よりも上下動が遅れる。

そのコアインフレ率は現在4%だが、もう少し下がってくるだろう。

ガンドラック氏は1年前の同じ月と比べる前年同月比の数字の話をしている。前年同月比の数字を予想するにはより直近の変化率を見れば良い。1ヶ月の変化を年率に直した前月比年率のコアインフレ率は次のようになっている。

確かにコアインフレの上昇率は徐々に下がってきているので、データが新しくなればなるほど前年比の数字はディスインフレ側に寄ってくるだろう。

だが結局重要なのは今後の動向である。筆者はむしろ、2023年半ばに前月比のコアインフレ率が下がってから、その後半年ほどむしろ上昇トレンドになっていることに注目したい。

その原因は住宅ローン金利やサービス価格などの低下が落ち着いてきたことにあり、前者はローン金利の低下、後者はなかなか弱まらない労働市場が原因にある。雇用統計については以下の記事で触れている。

さてインフレ率はどうなるだろうか。筆者の見方は、少なくとも今年6回の利下げを織り込む現在の金融市場の見方を更にハト派に推し進めるような統計データが今後数ヶ月で出ることを期待するのは分の良くない賭けではなかろうかというものである。

その相場観に基づいてポジションを適宜調整している。インフレ率は最終的には下がってくるだろうが、ガンドラック氏の予想するほどスムーズに行くだろうか。ダリオ氏の見方とも比べてみてもらいたい。