12月雇用統計はインフレ加速と経済減速を示唆

さて、今年初の重要な経済指標、昨年12月のアメリカの雇用統計である。今回はなかなか面白い内容となっている。

失業率

まずはいつものように失業率から見てゆこう。失業率は3.7%となり、前月から横ばいとなった。

上昇トレンドは崩れてはいないが、加速して上がってゆくような状況にもなっていない。

思い出すのは、アメリカ経済の減速には時間がかかるとするレイ・ダリオ氏の予想である。それを裏付ける失業率の推移だと言えるだろう。

平均時給

さて、インフレにとって一番重要なのは平均時給である。何故ならば、時給は労働の単価であり、特にサービス業にとってそれは商品(サービス)の単価に影響する主なコストだからである。

平均時給は前月比年率(以下同じ)で5.4%の上昇となり、加速していた前月の4.3%から更に加速した。

こちらはもはや減速トレンドとは言えないグラフになっている。金融市場の楽観によって金利などが緩和的になり過ぎているのではないかという懸念を筆者や経済学者ラリー・サマーズ氏はしていたが、その心配はもしかしたら当たっているのかもしれない。

賃金総額

ではインフレはこのままでは収まらず、金融状況は緩和的で、アメリカ経済は上向いて行くのだろうか。それがそうでもなさそうである。

最後にこれは雇用統計に公式には含まれていない統計だが、雇用統計の平均時給に週の平均労働時間と全労働者数をかけ合わせることで、労働市場全体で支払われた賃金の総額を考えることができる。

その賃金総額がどうなったかと言えば、3.5%の上昇となり、前月の9.5%から減速した。

これは平均時給が加速した一方で、労働時間が大きく減速したことによる。つまり労働の単価が上がったので企業は長時間労働者を雇えなくなっており、全体で見れば労働者に支払われる金額の伸びは減速しているということである。

結論

平均時給の加速は特にサービス価格のインフレを示唆する一方で、賃金総額の鈍化はアメリカ経済全体の減速を暗示している。

つまり、他のメディアではほとんど書かれていないことだが、今回の雇用統計はかなりスタグフレーション的だということになる。他のメディアでそういう結論になっていないのは、賃金総額を見ていないからである。

今年最初の経済指標解説はなかなか面白い結果となった。次はアメリカのインフレ率である。長期的にはやはりガンドラック氏が正しい。