サマーズ氏: 市場の織り込む利下げ幅は大き過ぎる

アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏が、アメリカの雇用統計を受けてアメリカ経済の先行きを語っている。

アメリカのインフレリスク

発表された12月の雇用統計は一般には強かったと報じられている。実際には、インフレリスクが上がった一方で経済減速のリスクも上がったと筆者は分析している。

経済は上向くのか下向くのか。景気減速リスクよりもインフレ再加速リスクをどちらかと言えば強調していたのが、サマーズ氏である。サマーズ氏は雇用統計後に次のように述べている。

わたしの直感では、金融市場は現在の状況下でのインフレリスクをいまだ過小評価しており、したがってこれからの利下げ幅についても恐らく過大評価しているだろう。

金融市場、特に株式市場は今年のFed(連邦準備制度)の利下げを期待している。Fed自身は12月のFOMC会合で今年3回(0.75%)の利下げを示唆している。

それに対して金利先物市場は6回(1.5%)の利下げを織り込んでいる。サマーズ氏はこれが過剰ではないかと言っているわけである。

まだ減速しないアメリカ経済

サマーズ氏は現在のアメリカ経済を次のように見ている。

高金利にもかかわらず、経済データによれば経済は引き続き力強い。それは中立金利が大きく上がったか、あるいは実体経済が予想よりも金利に影響されにくくなっていることを示唆している。

そのどちらの可能性が正しいとしても、利下げの緊急性は多くの人が考えているよりもやや少ないだろう。 

中立金利とは経済にプラスにもマイナスにもならない中立の金利水準のことである。それが上がったということは、金利もそれだけ上げなければ経済に効かないということになる。

いずれにしてもサマーズ氏はインフレはそう簡単には下がってこないと見ている。筆者も直近の経済データと長期金利の下落を考えれば、短期的にはその見方に傾いている。長期金利は以下のように推移している。

もし金利がここから少し上に戻るのであれば、既に歴史的な割高水準になっている米国株は影響を受けるだろう。

だが債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏はインフレと金利の低下を予想し続けている。さてどちらが正しいだろうか。