ネイピア氏: 欧米と中国の対立から利益を得るトレード

引き続き、The Solid Ground Newsletterのラッセル・ネイピア氏の、Resolution Foundationによるインタビューである。

今回は、アメリカやヨーロッパと中国との対立を投資家がどうトレードすべきかについて語っている部分を紹介したい。

分断される世界

ネイピア氏のテーマは、西側諸国と東側諸国の対立と各国経済のブロック化である。

ウクライナやパレスチナに関する戦争では、日本人が思っている以上に世界各国の見解は割れている。

特にウクライナ戦争に関してアメリカに肩入れしない国は多い。

だがアメリカはそれが気に食わないらしく、ロシアに対する経済制裁に同調しない国を経済制裁で脅してまわっている。だから各国は経済制裁されないようにアメリカがコントロールできるドルの保有を止め、外貨準備をゴールドに移しているのである。

また、最近ではロシアから原油を買っているインドがトランプ大統領から非難され関税率を上げられた。

アメリカの戦争に関わりたくない国にとっては、ドルを売ってアメリカとの貿易を減らすことが安全な選択肢となっている。

一方でアメリカやヨーロッパなどの西側諸国にとっては、虐めている相手から反撃を食らわないようにする必要性が生じている。何故ならば、ウクライナ情勢に関して西側諸国に同調しない国の多くはエネルギー資源やレアメタルを豊富に持っている国であり、欧米諸国では生産できないものを禁輸にされれば困るのは欧米諸国だからである。

東西対立をどうトレードするか

さて、この状況を投資家はどうトレードすべきだろうか。レアメタルなどは欧米にないものはどうにもならないのだから、この対立ははっきり言って勝負が見えていると言える。

しかしそれでも欧米諸国は自国で生産できるものは出来るだけ自国で生産しようとするだろう。

この状況で投資家に出来ることは何か。ネイピア氏は次のように言っている。

買うべき資産クラスについて言えば、買える銘柄はたくさんある。

中国を避けるために、現在中国から買っているものをすべて中国から買わなくなるのだから、これから国内で投資ブームが起きることになる。

対立している国家間での貿易が少なくなることで、各国は自国での生産に切り替える必要性に迫られる。

輸入すれば安いものを国内の高い労働力で作るのだから、同じものが高くなる。それは経済全体にとってマイナスである。

だが、経済全体にとってマイナスである変化が、個別の銘柄に対して短期的に必ずしもマイナスだということはない。

何故か。これまで生産していなかったものを生産するためには設備投資が必要であり、それがこれから行われようとしているからである。

ネイピア氏は特にドイツでそれが行われると予想し、次のように言っている。

ドイツの投資額は非常に巨額になる。適切なドイツ株に投資できれば利益を得ることができる。

ドイツでは、アメリカがウクライナから手を引こうとしていることから、防衛産業への投資も行われようとしている。

それでドイツ株は米国株よりも大きく上がっているのである。米国株は年始から数パーセントの上昇だが、ドイツ株は20%近く上がっている。

結論

ジェフリー・ガンドラック氏などは、同じ理由から米国株はこれからも他国の株式に負け続けると予想している。これは短期トレンドではないということである。

輸入によって安いものを買えなくなることは、経済にとっては全体的にはマイナスである。だが経済にとって良いことであれ悪いことであれ、経済が大きく動くなら買える銘柄が存在する。

それが投資である。ネイピア氏は次のように言っている。

そうした投資は政府主導なので、長期的には株式のリターンを破壊することになるが、当面の間は先進国で巨額の投資ブームになるだろう。

コロナ後の世界経済のテーマは、インフレ・高金利・紙幣から現物資産への移行・戦争・各国経済のブロック化である。何故これらの要素が互いに繋がっているのかを知りたい人は、レイ・ダリオ氏の『世界秩序の変化に対処するための原則』を参照してもらいたい。


世界秩序の変化に対処するための原則