ジム・ロジャーズ氏、ソロス氏のトレードの才能を語る

引き続きForbes(原文英語)による著名投資家ジム・ロジャーズ氏のインタビューである。今回はクォンタム・ファンドにおけるかつてのパートナー、ジョージ・ソロス氏について語っている部分を取り上げる。

アナリストとトレーダー

これまで取り上げた記事でもテーマになっていたように、ロジャーズ氏は投資テーマなどを探るアナリストであり、実際に取引を行うトレーディングは本業ではない。クォンタム・ファンドではロジャーズ氏がリサーチを担当し、ソロス氏がトレーディングを行なっていた。

これまでの記事では、クォンタム・ファンドを辞めて以来、ソロス氏というトレーダーを失ったロジャーズ氏が、「世界最悪の短期トレーダー」を自称しながらも金相場やアメリカのジャンク債などをどうトレードしているのかについて取り上げた。

この流れで、インタビューではクォンタム・ファンドでロジャーズ氏の代わりにトレーディングを行なっていたソロス氏との役割分担についても質問されており、ロジャーズ氏はこう答えている。

彼が最近何をしているのかは知らないが、一緒に働いていた時にわたしの役割だったのは、大量のリサーチとポジションの論理基盤の増強だった。わたし達のファンドは最初の10年間で4,200%のリターンを上げた。

クォンタム・ファンドを離れてからもう37年になり、以来わたしは彼とは連絡を取っていない。

この役割分担は的確だったと言える。優れたトレーダーであるソロス氏に、ロジャーズ氏のリサーチが加われば、その成果は金融業界に広く知られている通りである。

短期トレーダーの才能

さて、表題になっているのはソロス氏のトレード技術である。ソロス氏のトレーディングを傍で見ていたロジャーズ氏は、ソロス氏の能力をどのように表現したか? どうすれば彼のようにトレード出来るようになるのか? ロジャーズ氏は次のように述べている。

当時、わたし達は二人とも仕事熱心で、彼は優れた短期トレーダーだった。彼を見ていると、学校か何かに行って優れたトレーダーになれるとは思えない。トレーディングとは単に、才能があるかないかなのだ。

それが事実かどうかは分からないが、少なくともソロス氏の能力を目の当たりにしたロジャーズ氏には、そう見えたということである。

実は、短期的なトレーディングが転生の勘であるということについては、ソロス氏自身が以前語ったことがある。金融業界では広く知られているが、自伝『ジョージ・ソロス』における以下の箇所である。

私は動物的な勘に大いに頼っている。ファンドを活発に運用していた頃は、よく背中の痛みに悩まされた。その鋭い痛みはポートフォリオに何かおかしいところがあるというサインなのだ。

痛みは具体的に何が悪いのかということは教えてくれない。腰ならば空売りポジションだとか、左肩ならば通貨だとか、そういうことはない。しかし、その痛みは何かを見落としていることを教えてくれて、痛みがなければ確認しなかったような修正を促してくれるのだ。

ポジションに異常があれば背中が痛むというこことを信じられるだろうか? それをどうやって真似出来るだろうか? しかし、何かポートフォリオの論理構成に見落としがあれば、それが何かは分からずとも、何か居心地が悪くなるというのは理解出来るのではないか。そうした感覚が研ぎ澄まされたものが、ソロス氏の「痛み」なのである。

アナリストのロジャーズ氏

ロジャーズ氏が自分を「世界最悪の短期トレーダー」と呼ぶことには、ソロス氏のこうした一面を間近で見せつけられたことが一因としてあるのではないか。そして37年も連絡していない以前のパートナーの能力を今でも認めている。

一方のソロス氏の方はロジャーズ氏をどう捉えていたか? これについてはかなり前に報じてある。ソロス氏の方もロジャーズ氏の能力をしっかりと認識し、別れた後も認めるべき部分を認めているのである。

また、ソロス氏の方はロジャーズ氏が何故クォンタム・ファンドを離れなければならなかったのかについても少し言及している。こちらも面白いので、良ければ参照してもらいたい。


ジョージ・ソロス