トランプ政権: CIAがシリア反体制派への支援を打ち切り

これには驚いた。いわゆる「ロシア疑惑」における米民主党と大手マスコミの主張の正当性が公に疑われるようになったので、トランプ大統領は遠慮なくロシアとの対立解消に向かえるようになったというころだろう。

トランプ政権とシリア紛争

Washington Post(原文英語)の伝えるところによると、トランプ大統領はCIAが行なっていたシリアのアサド政権の転覆を目論む反体制派への武器供給及び戦闘訓練プログラムを打ち切ることを決定した。

シリアへの強硬姿勢を支持するリベラル紙であるWashington Postの原文によれば、この反体制派は「シリアの反政府”穏健派”」と表現されているのだが、アメリカから与えられた武器を持って政府と戦闘をする穏健派とは一体何を意味しているのか、筆者には皆目理解出来ない。シリアでなければ、反政府武装組織はテロリストと表現されるだろう。マスコミの表現には恣意が満ちている。

さて、話を戻すと、この動きはトランプ大統領が大統領になるより前から公約していた政策である。トランプ氏は、自分が大統領に当選すれば、アメリカは他国の政権転覆政策を止めることになると主張していた。以下の記事で取り上げたトランプ大統領の発言を思い出してほしい。

メディアは明日にでも「ドナルド・トランプはロシアと仲良くしたいらしい。酷いことだ」とでも言うだろう。しかしロシアと上手くやってゆくことは酷いことではない。良いことだ。

ロシアに対して強硬姿勢を示す方がわたし個人にとってはよほど簡単だ。分かるだろう? しかしわたしはアメリカ国民にとって正しいことをしたいのだ。そして第二に、正直に言うならば、世界にとって正しいことをしたいのだ。

トランプ氏の言う「正しいこと」とは、これまでベトナム、リビア、イラクなどで行われてきたアメリカによる他国の政権転覆を止めることである。しかし、その方針は民主党と大手マスコミによる「トランプ大統領とロシアの癒着疑惑」によって長らく妨害されてきた。ここでは随時報じていた通りである。

しかし最近になって米大手マスコミのCNNが、この「ロシア疑惑」をでっち上げた記者を辞職させざるを得なくなったことで、疑惑の根拠が疑われていた。

この流れに、G20におけるトランプ大統領とプーチン大統領の会談の成功が加わったことで、トランプ政権はこの決定を公に出すことが出来たのだろう。政府高官は決定は一ヶ月も前に、プーチン大統領との会談以前に行われていたとしているが、このタイミングでこの情報が出てきた意味を考えても良いだろう。

ようやく行われた決定

2016年11月の大統領選挙からこの決断に至るまで、余りにも長い道程だった。マスコミと米民主党の妨害に遭い、トランプ大統領の公約は頓挫しかけていた。以下の発言はトランプ大統領が珍しく弱音を吐いた部分である。

自分にとってはロシアに強硬姿勢を取る方がよほど簡単だが、それではロシアと何らかの合意に至ることは出来ないだろう。今では、アメリカとロシアが取引出来るかどうかは分からない。分からないのだ。そうなるかもしれないし、そうならないかもしれない。

マスコミによる妨害がこれほどのものとは予想していなかったのだろう。そうした中、トランプ大統領はリベラル寄りの娘の要望でシリアにミサイルを打ち込むこともあった。

しかし、紆余曲折はあったがトランプ大統領は決断をした。これでトランプ大統領は公約を守ったことになる。

決定の意味するもの

米国とロシアは長い間利害の対立を経験してきた。プーチン大統領は長らくアメリカの中東政策を非難していた。

要するに、あの領域に武器を持ち込んでいるのは誰なのかということだ。あなたがた(米国ジャーナリスト)は本当に、シリアで戦っているのが誰か、分かっていないのですか? 彼らのほとんどは傭兵です。彼らが金で雇われているということを理解していますか?

傭兵はどちら側であれ、金をより多く払う側に付きます。米国は傭兵に金を払っています。いくら払っているかもわたしは知っています。彼らは武器を与えられ、戦い、その武器は戦闘が終わった後も返ってくることはありません。

その後、彼らはその武器を持って、もう少し多く給与を払ってくれる組織(訳注:ISISを指す)を見つけ、その組織のために戦います。そしてシリアであれ、イラクであれ、油田を占拠するのです。

そして米国とロシアの対立は中東だけではない。ヨーロッパではウクライナとクリミアを巡って対立があった。ウクライナについては著名投資家ジム・ロジャーズ氏が面白いことを言っている。

しかし、こうした状況も改善されるだろう。そう信じられる報道である。そうなれば、投資家にとって朗報なのは、ロシア株へのネガティブなリスクが取り除かれたということである。

ロシア株見通し

トランプ相場はしばしば1980年代のレーガノミクス相場と比較されるが、しかし本当にレーガノミクス時の好景気に近いのはロシア経済である。レーガノミクスでは、インフレ退治が終わり、金利を下げることが出来たことによって株価が大いに上昇することになった。この状況は今のロシアと同じである。

ただ、今年1月に書いた上記の記事では、ロシア国債を推奨した上で、ロシア株については以下のように記述していた。

ロシア株はアメリカ大統領選挙後に上昇しているので、MICEXが1800-1900程度まで下落して価格に対する利回りが上昇するのを待つか、あるいはまだ買われていない個別株を選別して買っていくのが良いだろう。

ロシア株には配当が10%を超える優良株がまだごろごろしており、配当を受け取りながら長期で待てる投資家は、短期的な下落を気にする必要もないだろう。

しかしその後、ロシア株は下落し、魅力的な水準に近づきつつある。残った懸念は、アメリカの金融引き締め政策がロシアを含む新興国市場にとってネガティブなものであるということである。

世界中の金融市場に影響を及ぼすアメリカの金融引き締めについては、様々な著名投資家が様々なことを言っている。

しかし、個人的には以下のレイ・ダリオ氏の主張が一番理に適っているのではないかと思い始めている。つまり、暴落ではなく長期停滞ということである。

では、その時ロシア株はどうなるのか? アメリカの金融引き締めと世界の金融市場については今後も報じてゆくが、とりあえずはこのニュースを共有しておくべきだろう。現代の外交史の大きな転換点である。