ガンドラック氏: アメリカは米国債の利払いを停止する、そしてそうすべきだ

DoubleLine Capialのジェフリー・ガンドラック氏がThe Julia La Rocheにおけるインタビューでアメリカの債務問題について語っている。

原油価格上昇とアメリカ利上げ

前回の記事でガンドラック氏は、イラン情勢による原油価格の高騰が原因でインフレになり、Fed(連邦準備制度)が利上げに追い込まれる可能性を指摘していた。

ホルムズ海峡の封鎖に伴う原油不足が長期的な問題となれば、インフレが足かせとなってFedは簡単に利下げができなくなる。

それどころか利上げに追い込まれる可能性もあるというのが、ガンドラック氏の指摘である。

だが、ガンドラック氏が本当に気にしているのは、金利の長期的な動向のことである。

アメリカの長期金利は次のように推移している。

米国の金利の動向予想

2022年にインフレで金利が上昇してから、長期金利は高止まりしている。債券市場は金利がここから上がってゆくとも下がってゆくとも決めかねているのである。

だが、ガンドラック氏は金利は長期的に上がると予想しているようだ。ガンドラック氏は次のように述べている。

長期金利は上昇を続け、それは無視するのが難しい難局を生じさせるまで続く。その水準は恐らく6%だろう。

その理由は、政治家は市場がそれを止めるまで、支出を増やすことを止めないということだろう。トランプ政権は、支出を減らすことではなく金融緩和で人工的に金利を下げることによって財政問題を解決しようとしている。だがそのやり方はインフレを招くだろう。

インフレで金利が許容範囲を超えて上昇するまで、政治家はインフレ政策を止めない。だからガンドラック氏は、借金に依存した経済政策というトレンドを止めるのは政治家ではなく、金融市場だと考えている。

ガンドラック氏は次のように続けている。

長期金利が6%程度まで上がれば、人々は計算を始め、2兆ドルを超える米国債の利払いに対処しなければならないという事態に気づき始めるだろう。この金額はもうどうしようもない。

なぜ金利上昇が問題となるのか。国債には利払いがあるからである。

ゼロ金利だった間は、どれだけ借金を増やしても問題がないように見えた。だがインフレ政策が本当にインフレを発生させてしまうと、金利を上げざるを得なくなり、国債には利払いが生じ始める。そしてアメリカでは金利上昇のために国債の利払いは財政赤字の半分ほどに達しているのである。

債務の指数関数的上昇

国債に利払いが発生し始めると、国の借金の量は政治家のコントロールを始め、指数関数的増加を開始する。利払いが新たな国債発行によって賄われるなら、その分借金が毎年増えてゆくということだからである。

そうすれば、複利効果によって、景気後退など経済的な危機がなくとも10年か20年で債務の量がどうしようもなくなることは、複利というものを知っている人ならば誰でも分かるだろう。

実際には、マクロ経済の世界では10年に1回ほど景気後退が起きるので、その時には既にどうにもならなくなっている借金を更に増やして不況対策をするのか、あるいは諦めて景気後退を受け入れるのかどちらを選ぶことになる。

大抵の場合は、政治家は借金を増やすことを選び、そして国債の発行量が市場の買い支えられる範囲を超え、国債の価格は下落し、金利は上昇、政府の財政は更に悪くなり、負のループへと突入してゆく。

ガンドラック氏は次のように続けている。

そしてアメリカの債務再編という考えが議論され始める。

恥を忍んでソフトなデフォルトをやるのだ。例えば利払いを諦める。そうなればどうなるかと言えば、アメリカはこれから数世代ほどの間お金を借りられなくなる。長期の米国債の価格は地に落ち、誰も米国債を信用しなくなるからだ。

誰もがそんなことは起きないと考えてきた。先進国はデフォルトしないと誰もが思っていた。

歴史を少しでも勉強していればそうではないということが分かるのに、誰も勉強しなかったのだろう。Bridgewaterのレイ・ダリオ氏は著書『世界秩序の変化に対処するための原則』において、アメリカの前に覇権国家だったイギリスやオランダはまさにそのようにして破綻していったと解説してくれている。

だが人々はアメリカはそうならないと考えている。根拠はない。アメリカは覇権国家だからか? だが覇権国家は歴史上実際に破綻しているのである。

結論

ガンドラック氏は、「ソフトなデフォルト」という、ここの読者ならばまさにありそうだと思うシナリオを予想している。だが、利払いを停止すれば誰もアメリカにお金を貸さなくなる。

だが、ガンドラック氏はアメリカはまさにそうなるべきだと言っている。彼は次のように続けている。

だが皮肉なことに、それこそが債務問題への解決策だ。お金が借りられなければ、収支を合わせるしかなくなる。だがアメリカはそうすべきだ。これ以上借金に依存した経済を続けるべきではない。

破綻からの経済のリセットである。ドルと米国債を持っている人は犠牲になるだろうが、イギリスやオランダのケースでも実際にそうなったのである。何の不思議があるだろうか。

そのリセットの引き金を引くのは米国債の利払いが限界に達することだとガンドラック氏は言っているのである。そして紙幣が印刷され、ドルが犠牲になる。ガンドラック氏は次のように続けている。

だから爆発的に増えてゆく利払いを無視できなくなるというのが引き金になるだろう。そうでなければ、ドルの価値を下げることになる。安くなったドルで借金を返すが、その代わりインフレが起こる。

何度も言うが、それは歴史上の事例をきちんと勉強した人にとってはメインシナリオである。レイ・ダリオ氏がアメリカがこうなることを見越して、イギリスやオランダなどの覇権国家が実際そうなった経緯を著書『世界秩序の変化に対処するための原則』において詳しく解説してくれている。

それを勉強した人だけが、ドルや米国債の運命を正しく予想することができる。そして、それは今後数十年の世界経済を生き抜く上で必須の知識である。


世界秩序の変化に対処するための原則