トランプ氏アカウント停止に見るTwitterのダブルスタンダード

前回の記事で報じたが、1月6日の有権者による米国議会襲撃にトランプ大統領が影響を与えたとして、トランプ氏のTwitterアカウントが永久停止になった。

トランプ氏はTwitter上で暴力を煽ったのだろうか? そこには議論があるが、過去にはトランプ氏を含む政治家たちが「暴力」を煽り、しかも何の問題にもならなかった事例が存在する。

2017年シリア爆撃

2017年4月7日、トランプ大統領率いるアメリカ軍はシリアに向けて59発のトマホークミサイルを打ち込んだ。

アメリカの言い分では「シリア政府がシリア国内で化学兵器を使った証拠がある」ためだそうだが、西洋側のこうした事例に対する「証拠」はブッシュ大統領が「イラクが大量破壊兵器を保有している」と主張してイラクに攻め込んだイラク戦争を持ち出すまでもなく歴史的に信憑性が薄い以前に、そもそもシリアの件で大西洋を隔てたアメリカが中東まで出張してくる正当な理由がまったくない。

トランプ氏は当時、59発のトマホークミサイルを打ち込んだあと次のようにツイートしている。

米国と世界を代表する米軍の偉大な男女諸君、おめでとう! シリア爆撃はとてもうまくいった。

また、トランプ大統領が爆撃を決定する前には2016年の大統領選で敗北したヒラリー・クリントン氏が、こちらはソーシャルメディア上ではないがアメリカによるシリア攻撃を率先して煽り、トランプ氏が実行した後には「世界はより多くを行うべきだ」と更なる攻撃を世界中に呼びかけた。

今回の議会襲撃がトランプ氏のツイートによって煽動されたかだが、アカウントがサスペンドされているため確かな検証ができない。(これはこの種の検閲の最大の問題点である。)しかし当時のシリア爆撃と比べてみると、彼は流石に次のようには言っていないはずである。

米国を代表する偉大な有権者の男女諸君、おめでとう! 議会襲撃はとてもうまくいった。

しかし片方は検閲され、片方は検閲されない。

西洋人の奇妙なダブルスタンダード

筆者にはどうも理解できないのだが、アメリカ人にとって他人にミサイルを打ち込むことは「暴力」ではないのだろうか? この時、トランプ氏のTwitterアカウントは停止されなかったし、それが議論されることさえなかった。更に過激なクリントン氏の発言はテレビやソーシャルメディア上で拡散されたが、それらが検閲されることは一切なかった。それを今の状況と比べてほしい。

アメリカにとって、「神聖な」米国議会に人が押し入ることは許せないことだが、中東人に向けてミサイルを打ち込むことは大した問題ではないということである。いかにも西洋らしい考え方ではないか。