世界最大のヘッジファンド: 米国株はここから2倍まで上がり得る

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏が、Youtubeに投稿した動画で現在の米国株の株価水準について語っているので紹介したい。

コロナ相場はバブルか

ダリオ氏は「現在の株価はバブルかどうか」について聞かれたようであり、動画ではそれに答えている。ダリオ氏は株価水準について次のように説明している。

例えば株価が高いとしよう。そうすれば将来のリターンは低いということになる。しかしその状態はかなり長い間継続することがある。バブルは必ずしもすぐに弾けるとは限らない。

だからバブルが弾けるのかどうかに注目しているが、まだその材料があるだけの状態だ。

ダリオ氏によれば現在の株価水準は、株式市場全体については「いくらか過熱」しており、ハイテクグロース株については「過熱」しているとしているが、バブルが弾けるタイミングはまだだと判断しているようだ。

ダリオ氏が特にハイテク株を名指しで他の銘柄より過熱としているのは興味深い。以下の記事で報じた通り、実際にBridgewaterはハイテク株をほとんど買っておらず、Walmartなどの配当株がポートフォリオの主力となっている。

これはハイテク株が割高ではないと主張する元クォンタムファンドのスタンレー・ドラッケンミラー氏とは真逆の相場観である。

バブル相場は続くか

いずれにしても現在の株価が少なくともある程度割高であるとダリオは考えている。

しかし50年のキャリアで多くのバブル相場を経験してきたダリオ氏は、過熱した株価がしばしば長期にわたって持続する可能性について述べている。その理由は低金利である。

債券の利回りを考えよう。現在、債券の利回りは非常に低い水準にある。債券に株価収益率があると仮定すると、債券にもよるが、その株価収益率は75倍くらいになる。

株価収益率とは株価を1株当たり純利益で割ったもので、その会社が投資金額を回収できるだけの純利益を上げるのに何年かかるかを示したものである。例えば株価収益率が20であれば、20年分の1株当たり純利益が株価と等しいことになる。

これを債券で同じように考えると、金利が投資金額の1%なら100倍、2%なら50倍ということになる。現在、アメリカの金利は1%から2%の間なので、大体75倍ぐらいの数字になるということだろう。

株式よりも債券の倍率が高くなるのは、一般に債券の方が安全だと考えられているからである。リスクが低い証券は高く評価される。(あるいは1株当たり純利益が増加するグロース株の場合も数字は高くなる。)

債券の株価(債券価格)収益率は低金利により高くなった。金利が低くなればなるほど倍率は高くなるからである。高くなった倍率は何を意味するか。ダリオ氏によれば、株式市場の株価収益率が高くなることを意味する。彼はこう続けている。

だから株式が債券と競争すると、債券の低いリターンと競争するということになる。だから債券の収益率が75倍の状況下では、株式が仮に50倍の株価収益率まで上昇したとしても不合理だとは言えないだろう。

ちなみに米国の株価指数S&P 500の2021年末の予想株価収益率は24ということになっているので、それが50になれば株価はここから2倍以上になるということになる。

結論

筆者の私見を言わせてもらえば、50倍の株価収益率というのは現在の金利を加味しても高過ぎるだろうと思う。ダリオ氏は現在の低金利下では高い株価収益率も許容されるという一般論を言いたかったのだろう。あるいは本当にそれほどのバブルになるということを示唆しているのだろうか。

問題は、ダリオ氏の論理では高い株価収益率を正当化することになっている金利がインフレのおかげで上がっていることである。アメリカの長期金利は次のように推移している。

去年末からの上昇で金利はコロナ前の水準とそれほど変わっていないのである。

一方で、債券投資家のスコット・マイナード氏は金利がここから低下するということを示唆している。それが実現すればダリオ氏の言うような株価水準も可能なのかもしれない。