消費税増税の決定あるいは再延期のGDPや株価への影響

消費税が5%から8%へ増税された2014年4月以来、日本経済は死んでいる。現状では特に個人消費がマイナス成長と瀕死である。

わたしは投資家として日本のGDPを毎四半期分析してきたが、経済成長率という一点に絞って言えば、アベノミクスは消費増税を行うまで成功していた。増税直前のGDP成長率は2.36%であり、増税がなければもっと上がっていただろう。

今回の論点は2017年4月の10%への消費再増税であり、これが見送られる場合と強行される場合で日本経済にどのような影響が出るかを考えてみたい。

消費増税は何故間違いか?

先ず、消費増税が何故間違いであるのかをはっきりとさせておきたい。わたしは別にクルーグマン氏のような財政拡張論者ではない。むしろ財政支出は継続不可能だと考えている。しかし上げるべき税金は消費税ではないのである。

2016年、先進国は皆同じ長期停滞に陥っている。これは労働人口の減少や技術革新などによって(実質、名目ともに)需要が減少しているということである。これは経済学的には低成長とデフレであり、この二つの要因はGDP比の政府債務の額を急増させてきた。

消費増税を考える上で先ず認識してほしいのは、問題は需要の減少にあるのであり、供給側、つまり企業側にあるわけではないということである。これは以下の記事で詳しく説明している。

労働人口の減少は家計にしてみれば収入の減少であり、少ない収入で多くの家族を養ってゆくということである。そうなれば当然家計は支出を抑えることを考える。

また、技術革新によってものの値段は格段に安くなった。書類がメールに置き換えられ、会議がSkypeに置き換えられ、UberやAirbnbなどのIT企業は何もないところから供給を生み出した。この意味ではどの市場も供給過剰である。今や先進国はものを必要としていないのである。

消費増税どころか消費減税が必要

需要がなければ当然企業は儲からない。間違ってはいけないのは、企業が儲からないから賃金が上がらず消費が増えないのではなく、消費が増えないから企業が儲からないのだということである。企業に資金を注入しても、需要がなければコストである賃金を増やすことはできない。

したがってこの負の連鎖を止めるためには、むしろ消費税を無くし、法人税を上げることでカバーすべきなのだが、日本政府は正にその逆を行っている。

これは日本政府がわたしと異なる経済学的信念を持っているからではない。日本政府に経済学的信念などない。消費増税と法人減税は財務省と経団連の利害調整の結果なのであり、日本の国益など元々問題にもなっていないのである。

消費税が10%だとどうなるか?

では消費税が10%になればどうなるか? 考えてほしいのは、消費再増税を待たずして日本経済は既に死に体であるということである。

8%への消費増税前に2%を超えていた実質GDP成長率は今や0.66%であり、個人消費に至っては-1.07%と既に何らかの経済対策が必要なレベルである。

ちなみに、ここまで読んだ読者にはお分かりだろうが、GDP成長率は個人消費のマイナス成長に引きずられてゆくだろう。逆ではないのである。個人消費が設備投資など他の指標を引きずってゆく。ここに更に消費再増税が加われば、GDPはかなりのマイナス成長になるだろう。

日経平均への影響は?

株価はどうなるだろうか? 消費再増税は、実は日本株にとって非常に時期が悪い。2017年中頃は、わたしの予想が正しければアメリカが金融緩和に逆戻りを始めている時期である。

つまり、ドル円がかなり下がっている可能性の高い時期である。ドル円の予想レンジについては、以下の記事を参考にしてほしい。

ドル円が下がれば輸出減少がGDPに更なる打撃を加える。日経平均はドル円に連動しているから、ドル円の下落と消費再増税が一緒になれば株価はかなり深刻な状況になる可能性がある。恐らくは、量的緩和バブルが完全に崩壊する一番最初の可能性は、消費再増税とその後のGDPの推移である。

消費増税再延期の場合は?

一方で、再延期の場合、短期的には日経平均にとってプラスとなる可能性がある。少なくとも市場に完全に無視されている日銀が追加緩和をするよりは効果があるだろう。

しかし上に書いた通り、日本経済は消費再増税なしでも既にかなり悪く、消費減税でも行わない限りは株価にとって長期的なプラスにはならないだろう。そして消費減税は財務省と経団連の組み合わせのある限り有り得ない選択肢である。

安倍首相が財務省に抵抗すべく頑張っている一方で、麻生財務相は完全に財務省の傀儡となっている。

官僚機構を変革しようとする骨のある政治家は居ないものなのだろうか。そのためにはかなり強力な国民の支持が必要となる。欲を言えば自民党も解党して分割した方が良い。一党独裁を打破する手段は恐らくそれくらいしかないだろうと思う。