11月の米住宅価格は下落続く、今年前半はインフレ減速継続へ

2022年11月のアメリカのケース・シラー住宅価格指数が発表され、アメリカの住宅価格は前年同月比(以下同じ)で7.7%の上昇となり、前回の9.2%から減速した。

Fed(連邦準備制度)の利上げで住宅ローン金利が上がっていることで、2022年4月以降減速が続いている。

下落が続くアメリカの住宅市場

前年同月比ではまだ上昇になってはいるが、直近のトレンドとしては住宅価格は下落が続いている。価格指数自体(上昇率ではない)のチャートは次のようになっている。

住宅市場は消費者物価指数の重要な要素でもあり、原油価格の下落に続いて住宅価格が下落していることから、アメリカのインフレ率は急落の一途を辿っている。

エネルギー価格と住宅価格が下落を開始した後は、金融引き締めが一番効きにくいサービスの価格が落ちるのを待つだけである。詳細は上記のインフレ率の記事を参照してもらいたい。

住宅価格の下落は続くか

ただ少し気になっているのは住宅価格の下落がややなだらかになりつつあることである。チャートをもう一度掲載しよう。

リーマンショックの時でもそうだったが、住宅価格は通常、上昇よりも緩やかな速度で下落していくことが多い。だから多少下落が緩やかになったからといって、即上昇に転じるということではない。

だが今年のインフレ率低下と金利低下に賭けている筆者のような投資家は、本当にそうならないか住宅価格の今後の動向をきっちり検証しておく必要がある。

住宅ローン金利はまだ高いか

現在住宅市場が冷え込んでいる理由は、Fedの利上げで住宅ローン金利が上昇し、ローンを組んで家を買う購入者が家を買いにくくなっているからである。

だから住宅価格の下落が続くかどうかは、ローン金利が十分高いかどうかによる。そこで30年物の住宅ローンの固定金利の推移を見てみたい。

読者はこれをどう見るだろうか。インフレ率の急落以来、Fedが利上げを強行する必要がなくなったとの見方が増え、住宅金利はピークから見ると下がっている。

ローン金利が下がれば住宅市場は息を吹き返すのか。だが一方で、住宅価格が下落を始めたのは4月以降であり、今の水準は去年4月の水準よりも高い。

また、4月には住宅価格は年率20%で上昇していた。一方で現在の住宅価格は下落している。

年率20%で価格が上昇しているものを買うために5%の金利を支払うのと、価格が下落しているものを買うために6%の金利を支払うのと、どちらが市場にとって引き締め的だろうか。

言うまでもないだろう。現在の金利水準は住宅市場にとってまだ十分引き締め的である。だから住宅価格は今後も下落を続け、インフレ率も今年の半ばまでは急落を続けると筆者は予想している。

また、以下の記事では金利は物価上昇率と比較して見ることの重要さに言及したが、住宅ローンを例に取ればその理由が分かりやすいだろう。

結論

このように経済統計を1つ1つ確認するのは地味な作業だが、筆者のようにアメリカの低金利とドル安に賭けている投資家にとってはその1つの作業が命を救うこともある。

現状、住宅価格の下落はやや鈍化しているが、データを見る限りではこのままインフレ率下落に賭け続けて問題ないと筆者は結論している。何かデータに異変が生じた時にはここで報告するので、引き続き記事を楽しみにしていてもらいたい。