ドラッケンミラー氏、誰でも30%以上の利益を出せる方法を語る

ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを運用していたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏がNBIM Annual Investment Conferenceで個人投資家に助言しているので紹介したい。

投資の秘訣

ドラッケンミラー氏と言えば、クォンタムファンド時代に1992年のポンド危機でポンド空売りをして大儲けしたことで有名である。これはソロス氏のトレードとして有名だが、実際にはこれを行なったのは当時ファンドを率いていたドラッケンミラー氏である。

だがそんなドラッケンミラー氏にとっても2023年の相場は難しいらしい。アメリカの株式や債券ではほとんど何もせず、唯一賭けているのはドルと日本国債の空売りらしい。

ドラッケンミラー氏は次のように述べている。

幸いなことに今わたしは顧客を持っていない。

だから良いパフォーマンスを出さないといけないというプレッシャーを感じることはない。

ドラッケンミラー氏は2010年に顧客から預かっていた資金を返して自己資金だけを運用している。

だが何もしないということが投資の秘訣だということをどれだけの人が知っているだろうか。多くの人は、何もすべきではない時に何もしないということが出来ないのである。

それはどういうことか? ドラッケンミラー氏は次のように説明している。

トレードすべきでない時にトレードせずにいれば、自分からトラブルに飛び込んでゆくことを避けられる。

投資で一番大切なことの1つは、確信が持てない時にトレードしないことだ。

投資家が投資すべき時

投資家が投資すべきなのは、高確率で勝てると分かっている場合(あるいはリスクリワード比が良い場合)だ。高確率で勝てる場合とは、例えば2022年の始めにインフレで金利が上がると分かっている時に、株価下落や金利上昇に賭けるトレードのことだ。

まさにこのタイミングで逆に日本人を扇動して株価の上昇に賭けさせた金融庁はある意味で天才である。

あるいはリスクリワード比の良いトレードとは現在の日本国債の空売りのことだ。

逆に言えば、そういう時以外には賭けてはならない。何故か。ドラッケンミラー氏は次のように説明している。

簡単な算数だ。投資では50%の資金を失えば、取り戻すためには100%の利益を出さなければならなくなる。

どういうことかと言うと、最初の資金が100万ドルだとして、50%失うと50万ドルになる。これを100万ドルに戻すためには手持ちの50万ドルを倍にしなければならなくなる。

だから出来るだけ損失をしないことがまず大事なのである。ドラッケンミラー氏は次のように続けている。

30%の利益を何度も出したとしても、55%や60%の損失を出してしまえばかなり後退してしまう。パフォーマンスの計算とはそういうものだ。

逆に投資をすべきタイミングには大きく賭けるべきだとドラッケンミラー氏は言う。彼は次のように述べている。

長期的に良いパフォーマンスを上げるためには、打てるボールが来た時には大振りすることだ。そして打てない玉は打たないことだ。

投資とは見逃し三振のない野球のようなものだとウォーレン・バフェット氏も言っていた。だが多くの人はそれが理解できずにつみたてNISAに何でもぶち込んでしまう。彼らは賭けないということができない。それが彼らの問題である。

ソロス氏から学んだこと

賭けるべき時に大きく賭けることは、ドラッケンミラー氏がクォンタムファンド時代の上司であるソロス氏から学んだことである。

ファンドマネージャーへのインタビューを集めた『新マーケットの魔術師』にはドラッケンミラー氏のインタビューも載っているが、そこで彼は当時のことについて語っている。

ドラッケンミラー氏がクォンタムファンドでドルを空売りしていた時のことである。彼はドルの下落を確信しており、しかもそのトレードは利益を出し始めていたので、そのポジションをかなり自慢に思っていた。

そこにソロス氏がやって来て「ポジションはいくらだ?」と彼に聞いた。彼は自信満々に「10億ドルです」と答えた。

そしてソロス氏は次のように続けた。

それでポジションのつもりか?

ソロス氏はドルの空売りポジションを2倍にするようにドラッケンミラー氏に伝えたという。

新マーケットの魔術師』には他にもソロス氏との逸話が載っているので暇があれば読んでみてほしいが、ソロス氏の言いたかったことは本当に確信しているポジションは出来る限り大きくしろということである。

ドラッケンミラー氏は賭けるべき時に大きく賭け、賭けるべきではない時に賭けずにいて損失を減らすことこそがソロス氏から学んだ一番大きいことだと言っていたことがある。

結論

その方法でドラッケンミラー氏はどのような利益を上げたのか? インタビューの司会者にこれまでのパフォーマンスを聞かれて次のように答えている。

顧客を持っていた30年間、年率30%を上回るパフォーマンスだった。最高の年には99%の利益を上げた。5%や7%の年もいくつもあった。

しかもドラッケンミラー氏には損失を出した年が存在しない。これはソロス氏でさえ成し遂げていないことである。

唯一損失を出しかけたのは、クォンタムファンドを辞める羽目になった年だろうか。この記事もなかなか面白いので是非読んでほしい。

どうすればドラッケンミラー氏のようなパフォーマンスを上げられるのだろうか。それは簡単な算数だ。彼は次のように個人投資家にアドバイスしている。

パフォーマンスが悪い年には利益は0%から5%程度に留めておいて、50%や60%の利益を上げられる年をいくつか混ぜておけば、長期的にはパフォーマンスは良くなるだろう。

コツは決してお金を失わないこと、そして普段の10倍くらいの大当たりをいくつか混ぜることだ。

司会者はこうコメントしている。

君のファンたちも見習えそうなアドバイスだ。


新マーケットの魔術師