ドラッケンミラー氏、ドルを空売りしてゴールドを買い

ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを運用したことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏が、NBIM Annual Investment Conferenceで2023年の金融市場について語っている。

まずはドル相場とゴールドについて語っている部分を紹介したい。

ドルの下落トレンド

ドラッケンミラー氏は、現在行われているアメリカの金融引き締めが実体経済に今後どういう影響を及ぼすかを見極めなければならない今年の相場を難しいと言った上で、次のように述べている。

今わたしが十分安心していられるポジションはドルの空売りだ。

ドルはここ半年ほど下がっているが、ドラッケンミラー氏はその下落トレンドの開始をもっとも早く予想した人物である。

そしてその後、実際にドルの空売りを開始したらしい。

ドラッケンミラー氏の宣言後、10月にはドルは実際に下落を開始した。以下はユーロドルのチャート(上方向がユーロ高ドル安)である。

何故こうなったかと言えば、2022年始めから行われていた利上げの結果、2022年秋にはアメリカのインフレ率が下がり始め、利上げの停止が視野に入り始めたからである。

2022年の秋までは利上げでドル高だった。高金利に惹かれてドルを保有したいと思う投資家が多かったからである。

ドル安の長期トレンド

だがその逆転が始まっている。そしてドラッケンミラー氏はドル安トレンドが当分続くと考えているようだ。

為替市場におけるトレンドは通常2年から3年ほど続く。

相対的にはアメリカの今後の金融引き締めは外国ほどには強くはならないだろう。

ヨーロッパではインフレがまだまだ収まっていない。

そして日本でもインフレ率は上がっている。ただ、日本の場合、政府公表の数字をそのまま信じてはいけない。理由は以下の記事に書いてある。

ECB(欧州中央銀行)や日銀が必要な利上げをするのかという問題はあるが、少なくともユーロ圏と日本経済は利上げを必要としている。

また、ドラッケンミラー氏は更に他の理由も挙げている。

更にアメリカはドルを武器として使っていて、ブラジルのルラ大統領などの人々が「何故貿易にドルを使わなければならないのか」と触れ回っている。

アメリカは自国の対ロシア戦争に加わらない国々をドルを使った制裁をちらつかせて脅している。それで、アメリカ以外との貿易でも慣習的にドルで決済していた多くの国が、アメリカの戦争に巻き込まれないようにするためにドルの使用を減らしている。

世界中で使われていた基軸通貨としてのドルの価値下落である。これは長期トレンドである。多くの人が同じ問題に言及している。

ゴールドの買い

また、ドルからの資金流出ということであれば、やはり気になるのはゴールドだろう。ドラッケンミラー氏はゴールドにも言及している。

わたしはゴールドも保有している。言うまでもなく同じ理由だ。

金相場は現在次のように推移している。

最近の動きに関して言えばユーロとほぼ変わらないのが分かるだろうか。

1970年代の物価高騰時代にドル紙幣の価値がどんどん減ってゆく中、金相場は資産の逃避先としてバブルになり、金価格は25倍になったことで有名である。以下の記事で解説している。

ゴールドが当時と同じようなバブルになるかどうかは、アメリカの金融政策がどうなるかにかかっている。このバブルの終了のタイミングについては以下の記事で説明している。

それはパウエル議長がインフレを本当に終わらせられるか次第である。ドラッケンミラー氏はそれについても述べているので、また別の記事で取り上げたい。