ドラッケンミラー氏、2023年の株式市場見通しを語る

引き続き、ジョージ・ソロス氏のクォンタムファンドを運用したことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏のNBIM Annual Investment Conferenceにおけるインタビューである。

今回は今年の株式市場の見通しについて語っている部分を紹介したい。

2023年の株式市場

前回の記事で、ドラッケンミラー氏はドルについては明確に下落を予想していた。

だが株式市場についてはドラッケンミラー氏は決めかねているようである。彼は次のように述べている。

わたしはこの仕事を45年やっていて、経済の歴史についてたくさん学んだが、11年のばら撒き政策と非常に広範な資産バブルの後に12ヶ月で5%もの利上げがあった今のような状況を経験したことがない。

だが司会者に何か言うように促されて彼は次のように言った。

投資の世界で大切なことは、確信のない時にプレイしないことだ。

もし頭に銃を当てられてどちらかに決めろと言われたら、(小型株指数の)Russell 2000のように伝統的に景気に敏感な銘柄を空売りするだろう。

Russell 2000はアメリカの小型株指数で、主に大企業で構成されるS&P 500よりも景気後退時に下がる傾向がある。Russell 2000のチャート以下のようになっている。

個別株見通し

だがドラッケンミラー氏が全面的な売りに決められないことにも理由があるようだ。彼は次のように述べている。

だがもしアメリカ経済がハードランディングに向かっていて酷い景気後退になるとしても、それでNVIDIAのような企業がどうなるかは分からない。

景気後退になっても、その間大きく成長し続けている企業はどうだろうか?

そういう株が下がるかどうかは分からない。

暗号通貨やAIなど大量の計算を必要とする分野で使われているGPUを生産しているNVIDIAは、恐らく今後10年一番成長する企業の筆頭候補なのではないか。高成長株は金利上昇に弱いので2022年には暴落したが、最近のインフレ減速で持ち直している。

NVIDIAはAIと暗号通貨という急成長分野の影響をそのまま受ける企業である。筆者にとっても景気後退で株価が下落するならば買いたいもののリストに入っているが、こういう銘柄はなかなか下がらないものである。

ともかくドラッケンミラー氏のポートフォリオはどうなっているのだろうか。彼は次のように述べている。

株式のポートフォリオは差し引きで3%の空売りになっている。

差し引きでは何もしていないようだが、わたしにはいつも買いたい銘柄と売りたい銘柄がある。

買いと空売りの両方を持っているらしい。差し引きでは少しの空売りとなっている。

株式市場の見通し

株式市場について多少筆者が付け加えるならば、まだそれほど弱まっていないアメリカのGDP(1.1%の成長である)に対して、株式市場は全体としては徐々に下がっている。

その理由は、消費や政府支出などのGDPの要素のうち、投資が大幅に下がっているからである。以下の記事で説明している。

企業などによる投資が減速している理由は、投資には融資が行われることが多いからである。お金を借りて投資するわけだが、金利が高くなればそれが難しくなる。金利高によって、GDPのうち投資は以下のように急降下している。

では何故投資が下がれば株価に影響するのだろうか。株価を決める最大の要因は金利と企業利益だが、マクロ経済には貯蓄投資バランスと呼ばれる以下の式が存在する。

  • 貯蓄 = 投資 + 貿易黒字

そして貯蓄とは経済主体である家計と企業と政府がその年に貯蓄できる金額のことだが、企業の貯蓄のことを企業利益と呼ぶ。

この式を解釈すれば、投資と貿易黒字の総額を家計と企業と政府で分け合うことになるわけだが、投資が増えれば分け前が増え、投資が減れば分け前が減るわけである。

そしてこの式から分かる興味深い事実は、この式には消費が含まれていないということである。それは驚くべきことに、消費の増加が企業利益に直接的には無関係だということを意味する。

何故そうなるのか説明できるだろうか? 興味のある人は、貯蓄投資バランスという言葉を自分で調べた上で、何故そうなるのか考えてみてもらいたい。

そういう努力が知的に面白いと感じる人だけが投資に向いている。ドラッケンミラー氏も次のように言っていた。

投資という業界では特にそうだが、わたしのように仕事を愛する人々は仕事にとても魅了され、知的な刺激を受けている。

もしあなたが仕事に熱狂しておらず、ただ金のために仕事をしているなら、その人がそういう人々に勝てる見込みはない。彼らはあなたを圧倒して打ち負かしてしまうだろう。

金を儲けたいから投資をしている投資家が勝てないというところが金融市場の面白いところである。

5月の半ばにはForm 13Fでドラッケンミラー氏の個別株ポジションが開示されるので、そちらも報じるつもりである。楽しみにしていてもらいたい。