ゴールドのインフレ暴騰相場が大暴落に転じるタイミング

以前の記事では金相場がインフレでバブルになってゆく様子について報じた。

だがあらゆるバブルもいつかは終わる。今回の記事ではそのバブル相場が終わるときはいつなのかについて説明したい。

インフレとゴールドバブル

コロナ後の世界的な現金給付によって生じたインフレのお陰で、金相場は好況である。

お金をばら撒いて紙幣の価値が薄くなったので、印刷して量を増やすことのできないゴールドに人気が集まっているのである。金価格は現在以下のように推移している。

アメリカでは一度高騰したインフレ率が下落しているにもかかわらず、金価格が再び上がり始めている理由は、アメリカ経済が減速した時にアメリカが再び金融緩和に走り、インフレ第2波が起こることを金融市場が懸念しているからである。

実際、前回のインフレ相場である1970年代にはインフレの3回の波が起こり、金価格は25倍に暴騰していった。以下の記事で詳しく説明している。

ゴールドバブルの行方

だからインフレが何度もの波になってこれからも続くのであれば、ゴールドは短期的な上下はあるだろうが長期的には暴騰相場を続けてゆくだろう。

だがバブルはいつかは終わる。ではバブルはいつ終わるのか? どういう兆候が見えたらゴールドに投資する投資家は手仕舞いを考えなければならないのだろうか。

1970年代の場合はどうだっただろうか。これまでの記事では金価格が暴騰したところまでしか書いていなかったが、実はこの後ゴールドは未曾有の暴落相場を演じている。

何故ならば、上がりすぎたからである。以下の記事で説明したように、1970年代に物価は2倍になった一方、インフレを避けるために買われたはずのゴールドは25倍になった。

明らかなバブルである。

金相場バブル崩壊とインフレの終了

だからいつかは価格は正常に戻らなければならなかった。だが投資家にとっての問題は、そのタイミングがいつかということである。

上記のチャートを見れば分かるように、ゴールドバブルの天井は1980年である。

1980年はまさにアメリカのインフレ率が天井を打った年ということになる。何故インフレ率が下落に転じたかと言えば、その前年にFed(連邦準備制度)の議長にポール・ボルカー氏が就任したからである。

ボルカー氏は当時も今と同じように中央銀行の紙幣印刷によって起こっていたインフレを退治するため、金融引き締めを行なっていた。

金融引き締めという点では今のアメリカの状況と同じである。だがボルカー氏が違ったのは、金融引き締めでアメリカ経済が死に、失業者が世間にあふれても金融引き締めを止めなかったことである。

このことについてはボルカー氏自身がこの記事で語ってくれている。

ちなみにインフレ退治で大量の失業者が出たのはボルカー氏のせいではない。インフレが発生した時点でそれを退治する時に失業が激増することは決定している。このことについては経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエク氏が説明してくれている。

だからそもそもの対策はインフレを引き起こさないことである。

インフレが収まって金相場バブルが崩壊するとき

だから現在の金価格上昇がいつまで続くにしても、それが終わるタイミングがいつなのか、もう読者には伝わっただろう。

それはボルカー氏が現れる時である。そしてその後インフレ率の下落とともに金価格はそれまでの上昇の大半を吐き出してゆく。

だからその時までの金価格の上昇が大きくなっていればいるほど、ゴールドの保有者は警戒してそのタイミングを見極めなければならないことになる。

ボルカー氏自身は2019年に亡くなっている。だから今問題になるのは、Fedの現議長であるパウエル氏がボルカー氏のように本当にインフレを終わらせられる人物なのかどうかである。

パウエル議長の心中

果たしてパウエル氏は、金融引き締めがアメリカ経済を急降下させ、巷に失業者があふれても金融引き締めを断固として継続できる人間なのか。

筆者はどちらかと言えばそれを疑っている。先ず第一に、パウエル氏は2018年に自身の金融引き締めで株式市場を急落させながら、最初は自分が株価下落の原因であることを否定したが、そのまま株価が落ち続けると結局それを認めて引き締めを撤回した。

筆者は当時の株価をリアルタイムで空売りしていたので当時の記事が残っている。

彼は基本的に批判に反応して動く人間である。2021年にも同じように、最初はインフレの長期化を何の根拠もなく否定していたが、実際にインフレが悪化して世間からの風当たりが強くなるとインフレ対策に乗り出している。

今彼が金融引き締めをやっているのがインフレ対策をしなければ世間に批判されるからだとすれば、金融引き締めで実体経済が悪化して世間から批判されれば、彼は金融引き締めを止めて緩和に転じるだろう。

結論

筆者はまだこのシナリオに賭けてはいない。筆者が賭けているのは、金融引き締めがこのままアメリカ経済を不況に持っていくところまでである。

その後のことはまた後で検証することになる。だがパウエル氏に関する筆者の見方が正しければ、長期的な金相場バブルの終わりはまだ見えないということになる。

だがその時はいずれやってくる。新たなボルカー氏が来た時にはゴールドの投資家にとってゲーム終了の合図である。それは頭に入れておかなければならない。

金相場やパウエル氏に関する他の投資家の意見も参考にしながら、金相場を見守っていってもらいたい。