ワクチン3回目接種に反対したFDAの科学者、バイデン大統領に辞職に追いやられていた

2021年8月、アメリカの食品医薬品局のワクチン審査部長だったマリオン・グルーバー博士と副部長だったフィリップ・クローズ博士の辞職が発表された。アメリカが成人へのワクチン3回目接種を承認しようとしていた最中の突然のニュースだった。

3回目接種の承認をめぐる争い

2021年といえばマスクを嫌った欧米人がワクチン接種にこだわり、ワクチンがあればマスクは要らないとワクチンに殺到していた頃である。

元々10年かかるワクチン開発が1年足らずで終了し、本来ならば動物実験が行えるかどうかも怪しい時期に何十億人もの人々への接種が実際に行われた新型コロナウィルスのワクチンだが、特例だったことがもう1つある。短期間に何回もの接種が行われたことである。

欧米では誰もがワクチンを打ちたがっていたこの時期に、3回目のワクチン接種に否定的だった科学者がいる。グルーバー氏とクローズ氏である。

彼女たちは後にWashington Postの記事(原文英語)にこう書いている。

流行り始めているオミクロン株を考慮に入れても、全員への3回目接種が必要だとは思わない。

何度もワクチンを接種することが「科学的」だと何十億人もの素人たちが何の根拠もなく考えていた一方で、科学者はそれを疑っていたということになる。

しかもこの2人は食品医薬品局においてワクチン接種を承認する部門の責任者だったのである。筆者は寡聞にして「科学」に詳しくないのだが、察するに人々の言う「科学的」とは、何の根拠もなく科学者の考えとは逆のことを信じることなのだろう。

食品医薬品局の頭を飛び越えたバイデン大統領

いずれにせよ、彼女たちが首を縦に振らなければ3回目接種は承認されない。だがバイデン大統領はもう決断していた。

彼にとって3回目接種が安全かどうか、効果的かどうかはどうでも良かったらしい。グルーバー氏らが二の足を踏んでいる時、バイデン氏は彼女らの頭を飛び越えてすべてのアメリカ人に3回目の接種を行うと発表してしまった。2021年8月半ばのことである。

これで食品医薬品局には選択肢がなくなる。大統領が発表してしまったものを「安全ではないので承認できません」とは言えない。

ここでグルーバー氏の良心が問われた。あなたがこの状況に置かれたら、どうするだろうか? 被雇用者の読者は普段の仕事で同じ状況に置かれたらどうするかを考えてほしい。筆者であればやることは決まっている。グルーバー氏の心も決まっていた。

8月末、グルーバー氏とクローズ氏の辞職が発表された。しかも彼女たちはただでは辞職しなかった。9月にはLancet誌に彼女たちの論文(原文英語)が掲載された。

この論文で彼女たちは3回目接種に反対し、またワクチンの副作用についても触れている。副作用についてはまずWashington Postの記事の方に次のように書かれてある。

mRNAワクチンを2回接種した健康な若者が新型コロナで入院する可能性は極めて低く、心筋炎を含む副作用が起こるリスクを取らなければならない必然性は非常に低い。

しかも心筋炎については論文の方で「一部のmRNAワクチンでは2回目接種後により一般的になる」と書かれている。副作用のリスクは上がるのである。

それでも行われた3回目接種

だが科学的に何が正しいかと、世間一般にワクチンを打つべきだという風潮になるかどうかにはまったく関係がない。3回目接種は世界中で行われた。それが安全で効果的だからではなく、バイデン氏がグルーバー氏らを辞職に追い込んだからである。

バイデン氏はよほど3回目接種を行ないたかったのだろう。オバマ政権時代にウクライナ政府を自分の都合で自由に使っていたことを含め、彼は基本的に何でも好きなようにする。

彼が3回目接種を強行したかった理由は不明だが、少なくともワクチンを製造しているPfizerとModernaはともにアメリカの会社であり、両方の株価はワクチン接種が大量に行われたお陰で暴騰した。以下はModernaの株価チャートである。

だが代わりにあまりに多くの人々が本来打つべきではない3回目接種を打たされ、高熱や心筋炎などの副作用を受けたことになる。

バイデン氏の利権のためなのだから人々も我慢してくれるとバイデン氏は踏んだのだろうか。何故人々はこうもバイデン氏に優しいのか筆者には理解不能である。身も心も捧げる覚悟ではないか。

結論

結局、この3回目接種については2023年4月になってWHO(世界保健機関)が推奨しないことを発表している。だがもう手遅れではないか。10年かかるワクチン開発は1年では出来ないというよく考えてみれば当たり前の事実に事前に気づいた極少数の人々を除き、多くの人はもう3回目接種をしてしまった。

彼らの高熱や副作用は無駄だったのだろうか。無駄ではなかった。少なくともバイデン氏の役には立ったからである。

だがこの話には少なくとも教訓がある。この話は2021年のインフレに対する世論に似ている。

2021年、インフレが脅威だと思っている人々は世の中にほとんど居なかった。政府もインフレは問題ないと言っていた。だが筆者や世界的なファンドマネージャーたちは2021年に何度も物価高騰を警告していた。

奇しくも同じ時期なのである。同じ時期にバイデン氏の妄想とそれを盲信する馬鹿たちと戦っていた専門家が医学の世界にも居たということである。

何処の業界でも状況は変わらないらしい。自分の頭で考えない人は相応の結果を受けることになる。